目の下のしわには、乾燥によって生じる小じわ、加齢や紫外線のダメージによって生じる大じわ、表情のクセによって生じる表情じわなどがあります。

目の下、特に下まぶたの皮膚の厚みは1mmに満たず、顔の皮膚の中でも特に薄い場所であるため、乾燥を招きやすく、またしわの生じやすい部位と言えるでしょう。(1)

目の下のしわの有効な対策を、THE ONE. 院長の上原 恵理 先生に解説していただきました。

監修・取材協力:上原 恵理 先生(THE ONE. 院長)

目の下のしわによる見た目への影響

目の下に限らず「しわ」は、赤ちゃんや幼い子どもの皮膚には見られない特徴です。そのため、しわがあると加齢の影響を感じやすく、老けて見えたり、疲れた印象を与えたりしがちです。

しわは、シミたるみなどと並んで代表的なエイジングサインのひとつといえます。

また、しわには「自分よりも他人から気付かれやすい」という特徴があります。30~50代の女性に実施したアンケート調査で、自分の顔と友人の顔で気になるのは「たるみ」がもっとも多い回答でした。

しかし、2位以降、自分の顔で気になるのは「シミ」、友人の顔で気になるのは「しわ」という、異なる結果になりました。

自分の顔で気になるポイントと友人の顔で気になるポイント

しわによって顔に線や溝が刻まれると、それに沿って影ができ、顔全体の印象が暗くなってしまいます。(1)

そのため、自分が思っている以上に、相手に老けた印象を与えてしまうこともあるようです。他人から注目されやすい目の周辺であれば、なおのことかもしれません。

目の下のしわの種類と原因

「目の下のしわ」というと、一般的に以下の4種類のしわを指し示すことが多いです。(1)

目の下のしわの種類

小じわ(ちりめんじわ)

小じわは、主に加齢や肌表面の乾燥によって表皮に現れます。しわのなかでは比較的初期の状態です。(2)

表面に独特の凹凸がある「縮緬(ちりめん)」という布地に見た目が似ていることから、ちりめんじわと呼ばれることもあります。

目の周りの皮膚は、顔の他の部位と比較しても極めて薄いとされています。(1)そのため乾燥を招きやすく、小じわができやすい部位といえます。

表情じわ

表情じわのメカニズム

表情じわは、笑う・怒るなど表情を表す際にできるしわのことです。本来は一時的なもので、表情が戻るとしわもなくなります。しかし、繰り返し筋肉を動かし続けると、加齢とともに皮膚のハリや弾力が低下するのとも相まって消えにくくなり、顔にしわが刻まれていきます。(1)

目の周りでは、目尻のしわが表情じわにあたります。笑った時にできるので「笑いじわ」とも呼ばれます。(1)

現代人はスマホやパソコン作業などで目を酷使していることから、加齢によって、目の周りの筋肉である眼輪筋(がんりんきん)の筋力や、肌弾力の低下が起こりやすく、しわを押し戻せないまま慢性化しやすいといわれています。

大じわ

大じわのメカニズム

目の下のしわのなかでは、下まぶたのふくらみ(たるみ)が、大じわにあたります。(1)

大じわとは、主に加齢や紫外線のダメージによって、真皮に存在するコラーゲンやエラスチンなどの弾力線維が皮膚の重力を支えきれなくなって生じるしわのことをいいます。(3)

たるみじわ

ゴルゴラインが生じる顔内部の変化

目の下にあるしわのなかでは、ゴルゴ線(ゴルゴライン)がたるみじわに該当します。(3)

たるみじわとは文字通り、肌のたるみ(下垂)によってできるしわのことです。肌内部の形状が崩れた結果、影ができ、しわのように見える境界線や溝を指します。(2)

医師が教える、目の下のしわに効果的な対策と注意点

インターネットをはじめ、さまざまなメディアで目の下のしわの改善方法が取り上げられていますが、紹介されている方法はいずれも適切といえるのでしょうか。上原先生に伺いました。

スキンケア

スキンケアは目の下に限らず、乾燥による小じわ予防の基本です。

日々のスキンケアで肌を保湿し、乾燥を防ぐことで、小じわをできにくくします。(2)

昨今は乾燥による小じわの改善が認められた化粧品も販売されています。(2)そうしたアイテムを取り入れてみるのもよいでしょう。

マッサージで血行改善

目の下のたるみやしわを改善する方法として、マッサージが紹介されていることもあります。マッサージをすると血流が一時的に良くなり、しわが目立ちにくくなる というのが、その理由です。(4)

しかし、マッサージによって血流改善の恩恵が得られるのは、あくまで一時的なもの。日常的なケアとしてはあまりおすすめできません。

薄い目の周りの皮膚に、マッサージによる刺激が加わることでかえってしわが増えたり、色素沈着したりすることがあります。(4)結婚式や何かの撮影、イベントの前など特別な時に行う程度にとどめておきましょう。

マッサージはしわや色素沈着を引き起こす可能性があるので、要注意

メイクによる工夫

メイクによって上手に目の下のしわを目立たなくすることは可能です。

例えば、目の下にたるみがあり影ができている場合は、ファンデーションや目元用のコンシーラーなどを使ってベースメイクで影を整えると、しわが目立ちにくくなります。(1)

ただし、しわが気になる人の場合、影を目立たなくしようとベースメイクを厚塗りし過ぎないように要注意。ベースが厚くなると、しわの間にファンデーションや粉が入り込み、目立ってしまいます。なるべく目周りは薄めに仕上げるように心がけるとよいでしょう。

美容医療

目の下のしわに分類される目尻のしわ目の下のたるみゴルゴラインなどは、主に加齢による顔の内部の変化によって現れます。(3)顔の内部へのアプローチは、セルフケアでは難しいもの。したがって、美容医療が有効です。

美容医療を受けることで、気になっていた目の下のしわを早期に、ハッキリと改善することが可能です。

また、医師から客観的なアドバイスがもらえることで、自分の肌状態や問題点なども明らかになります。ぜひ選択肢に入れてみてはいかがでしょう。

目の下のしわ改善にはセルフケアに加えて、美容医療を取り入れて

目の下のしわを美容医療で改善するには、しわの種類や状態を正しく見極めることが大切です。最適な治療を受けるために、まずは医師の診察(カウンセリング)を受け、自分のしわに合った治療を選択するのがおすすめです。

目の下のしわ改善に有効といわれている治療法は以下の通りです。(1)
※国内未承認治療を含みますが、それらを推奨するものではありません

  1. ヒアルロン酸注入治療
  2. ボツリヌス治療
  3. 外科手術による治療
  4. 照射による治療

加齢とともに顔内部の骨や皮下脂肪が減少し、余った皮膚が伸びてしまうなどした場合は、余分な皮膚を取り除くなどの外科手術が必要になることもあります。

しかし多くの場合は、ヒアルロン酸などによる注入治療で目の下のしわの改善が期待できます。(1)治療方法を詳しく見てみましょう。

ヒアルロン酸注入治療

しわ治療の代表的な施術であるヒアルロン酸注射

ヒアルロン酸を皮膚に注入することで肌の保水性が高まり、ハリや弾力も高められるため、目の下の小じわ改善に期待できます。(3)

また、ボリュームダウンしている箇所への注入を行うことで、皮膚を内側から持ちあげるように、ふくらみやたるみといったたるみじわの改善が期待できます。(3)

ヒアルロン酸は時間が経つと徐々に吸収されていくため、定期的に注入を行いメンテナンスする必要がありますが、「ダウンタイム」と呼ばれる治療後の回復期間は数日~1週間程度と比較的短く済みます。(1),(5)~(7)

施術時間も目の下の場合、1か所につき5~10分前後で治療が可能。使用するヒアルロン酸注射の種類によっては肌質改善もできます。

しかし、注入する部位によっては高度なテクニックが求められることも。(3)複数の医師のカウンセリングを受けるなどして、自分にとって信頼のおける医師を見つけることが大切です。

ボツリヌス治療

ボツリヌス注射の成分であるボツリヌストキシンには、筋肉の緊張をゆるめ、リラックスさせる作用があり、表情じわである目尻のしわの改善効果が期待できます。(1)

注入後2日くらいすると徐々に効果が現われ、2~3週後にピークを迎えた後、4~5か月間ほど持続します。ダウンタイムはほとんどありません。(1)

過剰な投与や誤った使い方をしなければ低リスクで利用できる施術です。なお、妊娠中や授乳中の方などは受けることができません。

目の下のしわに関するよくある疑問

目の下のしわに関する気になる疑問を、上原先生に教えていただきました。

目の下のしわのケアは美顔器がいい?

目の下のしわのケアとして美顔器を取り入れるのはあまりおすすめできません。

マッサージを行うタイプの美顔器の場合、目の下の薄い皮膚にとって刺激になり、しわを目立たせてしまったり、色素沈着してしまったりすることがあります。(4)

美顔器の使用方法や使用可能部位などをよく確認し、適切に使いましょう。

今すぐ目の下のしわを目立たなくすることはできる?

セルフケアだけで今すぐ目の下のしわを目立たなくすることはできません。

できるだけすぐに、ハッキリとしわを改善したい場合は、美容医療がおすすめです。注入治療ならば効果もわかりやすく、外科手術に比べるとダウンタイムも短く済みます。検討してみてください。

 

参考文献
(1) 大慈弥 裕之, 古山 登隆 他: 目もとの上手なエイジング―眼瞼下垂から非手術的美容医療,エイジング世代のメイクアップまで―. 2021
(2) 川田 暁:美容皮膚科ガイドブック第3版.中学医学社2023
(3) 古山 登隆:解剖から学ぶヒアルロン酸注入療法:メディカルレビュー社.2020
(4) 安田 利顕,漆畑 修:美容のヒフ科学 改訂10版:南山堂.2021
(5) 田中志保:モダンメディア. 2021;67(10):421-426
(6) 大慈弥 裕之:ヒアルロン酸注入治療安全マニュアル. 克誠堂出版. 2018
(7) KM Kapoor, et al. : Clin Cosmet Investig Dermatol. 2021;14:1105-1118

※調査概要
株式会社クロス・マーケティング調べ
調査目的:しわに関する調査
調査対象:全国の30~50代女性、各世代100名、計300名
調査方法:インターネットリサーチ
調査期間:2013年8月15日(木)~8月20日(火)
利益相反:アラガン・ジャパンにて調査企画し、株式会社クロス・マーケティングに調査を依頼
株式会社クロス・マーケティングが調査票を作成し、オンラインパネル登録者に調査、回収

監修・取材協力

THE ONE. 院長 上原 恵理 先生

THE ONE. 院長 上原 恵理 先生

群馬大学医学部医学科卒業。東京大学医学部医局後、形成外科分野において数多くの手術経験を積む。美容クリニック勤務を経て2021年医療法人社団桜恵会THE ONE.を開院。日本形成外科学会認定専門医。日本美容外科学会(JSAPS)広報委員会委員。

これまでに積み上げた確かな技術と実績で、数多くの患者様から信頼を得ている。

現在、正しい美容知識の普及のため、メディア、執筆、商品開発など幅広い分野に活動の場を広げている。

THE ONE.

住所:東京都港区虎ノ門4-3-10 虎ノ門きよしビル2・3階

前の記事へ
次の記事へ