ナイアシンアミドは、ビタミンB群の一種で、美容面で肌にさまざまな働きかけをする成分です。
たとえば、メラニンの生成を抑えてシミを予防する作用、コラーゲンの生成を促し乾燥によるしわを改善する作用、炎症を抑えニキビなどの肌荒れを予防する作用などがあります。
ナイアシンアミドが肌にもたらす効果について、THE ONE. 院長の上原 恵理 先生に解説していただきました。
監修・取材協力:上原 恵理 先生(THE ONE. 院長)
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ナイアシンアミドは、ビタミンB群の一種で、美容面で肌にさまざまな働きかけをする成分です。
たとえば、メラニンの生成を抑えてシミを予防する作用、コラーゲンの生成を促し乾燥によるしわを改善する作用、炎症を抑えニキビなどの肌荒れを予防する作用などがあります。
ナイアシンアミドが肌にもたらす効果について、THE ONE. 院長の上原 恵理 先生に解説していただきました。
監修・取材協力:上原 恵理 先生(THE ONE. 院長)
ナイアシンアミドは、ニコチン酸アミドとも呼ばれます。
ビタミンB群の一種であるビタミンB3のことで、食品ではレバー、肉類、魚類、豆類、緑黄色野菜に含まれています。
近年では、しわ改善や美白有効成分として薬事承認されたため(1)~(3)、医薬部外品として薬用化粧品のパッケージに書かれているのを目にする機会が多いかもしれません。
ナイアシンアミドは、多方面から皮膚の健康維持に役立つ、「美肌のオールラウンダー成分」ともいわれています。
ナイアシンアミドには、メラノソームの移行を阻害することによる美白作用があります。(4)
メラノソームとは、細胞内に存在し、メラニン色素を合成・貯蔵する役割を果たす袋状の構造物です。(5)
メラノソームが表皮の角化細胞に移行すると、シミや皮膚の色の変化がもたらされます。ナイアシンアミドにはそれを抑制する働きがあります。
ナイアシンアミドは、皮膚のコラーゲン産生の増加、セラミド合成の促進、低下した表皮のバリア機能の回復など、主に皮膚の保水力を高める働きがあるともいわれています。(6)
ナイアシンアミドのこのような働きにより、主に乾燥による小じわの予防や改善が期待できます。
また、角質細胞の蓄積によって目立つ細かいしわの対策に、ナイアシンアミドによるピーリング成分が効果的なこともあります。(7)
ナイアシンアミドによる皮膚のバリア機能修復作用には、ニキビなどの肌荒れの予防効果も期待できます。(8)
ナイアシンアミドには、皮脂の分泌そのものを抑える働きもあることがわかっています。(9)
コラーゲンの産生の増加、セラミドの合成の促進といった作用によって皮膚の真皮層の保水力は高めるものの、表面の皮脂分泌を抑えるため、過剰な皮脂分泌による肌のテカり防止につながります。
ナイアシンアミドは、皮膚の状態を整えるさまざまな働きを持っていることや、物質としての高い安定性などから、多くの化粧品や医薬部外品に配合されています。
ナイアシンアミド配合化粧品を選ぶ際のポイントについて解説します。
ナイアシンアミドは基本的に濃度が高いほど、もたらされる働きも大きくなる傾向にあります。(8)
そのため、より高濃度のものを選んだほうがよいのでは?と思うかもしれませんが、必ずしもそうとは言えません。
ナイアシンアミドには皮脂の分泌を抑える働きがあるため、コラーゲンの産生の増加やセラミドの合成の促進によって皮膚の内部はうるおっても、表面は乾燥に傾きやすくなります。
ナイアシンアミドが高濃度に配合されたものを選ぶと、乾燥という別の悩みが出てしまうこともあるでしょう。
ナイアシンアミドを高濃度で配合している化粧品を使うと乾燥が気になる場合は、配合量の少ないものに変えて様子を見るという方法もあります。
化粧品とは美容を目的としたもの、一方、医薬部外品(薬用化粧品)とは予防や衛生を目的としたものを指します。
ナイアシンアミドは、医薬部外品において「しわを改善する」という効能がうたえるようになっています※。(10)
医薬部外品としてナイアシンアミドを使う場合は、決められた範囲内で配合することが厚生労働省によって定められています。
一方、化粧品に配合する場合、成分を表示する義務はありますが、濃度については表示義務がありません。そのため、なかには医薬部外品(薬用化粧品)よりも高濃度で配合されている場合もあります。
「ナイアシンアミドは気になるけれど、肌の乾燥が不安」という方は、配合量が決められている医薬部外品を選ぶのもポイントのひとつです。
※化粧品は製剤による保湿効果により、「乾燥によるしわを目立たなくする」という効能が標榜可能。医薬部外品については、有効成分による生理作用によって「しわを改善する」という効能が標榜可能。(3)
ナイアシンアミドが配合された化粧品や医薬部外品(薬用化粧品)を使う際のポイントをご紹介します。
ナイアシンアミドは、肌へのさまざまな影響が期待できる成分です。ナイアシンアミドが配合された化粧品や医薬部外品(薬用化粧品)を毎日のスキンケアとして取り入れることで、化粧品による保湿効果や薬用化粧品によるしわ改善効果が期待できるでしょう。
インターネットを中心に「ナイアシンアミドとレチノールを併用すると肌に良い影響が期待できる」といわれることもあります。
レチノール(ビタミンA)とは脂溶性のビタミンの一種で、肌内部のヒアルロン酸産生が促進され、肌の水分量が増加することが報告されている成分です。また、コラーゲンの生成を促すのでしわに対しての効果も認められています。(3),(11)
ですが、ナイアシンアミドとレチノールの成分としての相性が特別良いというわけではないようです。併用することに問題はありませんが、過度な期待はしないほうがよいでしょう。
レチノールの他に、ビタミンCとナイアシンアミドの併用をすすめる記述も見受けられます。
ビタミンCもレチノールと同様、ナイアシンアミドとの相性が特別良いわけではありませんが、同じように肌のさまざまな悩みを整えることが期待できる成分です。
ただし、ナイアシンアミドとビタミンCはどちらも皮脂の分泌を抑える働きをもっています。(3)
併用すると肌の表面の乾燥を招きやすくなることもあるため、十分な保湿を心がけましょう。
ナイアシンアミドが配合された化粧品や医薬部外品(薬用化粧品)を使う際には、以下のような点に注意が必要です。
ナイアシンアミドには、他の成分との併用による相互作用や重篤な副作用は報告されていません。(12)
ナイアシンアミドが配合された一般的な化粧品や医薬部外品(薬用化粧品)を適量使用する範囲においては、安定して使える成分と考えてよいでしょう。
ただし、余りに大量に摂取すると、「ナイアシンフラッシュ」と呼ばれる、体のほてりや痒みがあらわれることがあります。
アメリカでは、ナイアシンアミドは心筋梗塞などの高コレステロールに起因する病気の予防と治療に使われていて、一度に100~200mg以上のニコチン酸を投与すると、ナイアシンフラッシュが起こるといわれています。しかし、2~3時間すれば症状が改善するのがほとんどです。(13)
また、特に重篤な副作用がない場合でも、化粧品は使用する人の体質や体調、季節や年齢などによって、使用中または使用後に、ほてり、かゆみ、赤み、痛み、腫れなどの異常が肌にあらわれることがあります。
このようにお肌に合わない場合は、ただちに使用を中止するようにしましょう。(14)
ナイアシンアミドは、皮膚のバリア機能の低下などによる乾燥や、角質細胞の蓄積による小じわの改善が期待できる成分です。
しかし、しわには「小じわ」のほかに、加齢や紫外線のダメージによって、真皮に存在するコラーゲンやエラスチンなどの弾力線維が皮膚の重力を支えきれなくなることで生じる「大じわ」、笑う・怒るなど表情を表す際に眉間や目尻、口の横、額などにあらわれる「表情じわ」、肌内部の形状が崩れた結果、影ができ、しわのように見える「たるみじわ」などがあります。
医療用のヒアルロン酸製材(皮膚充填材)を肌やその下の組織に注入することによって、ボリュームロスした部位を補い、しわや溝を目立たなくする方法です。ヒアルロン酸注射で使用する製材は、さまざまな種類があり、治療目的や注入する部位などに応じて、製材の硬さやヒアルロン酸の濃度を使い分けています。(15)
ヒアルロン酸はもともと体内にある物質で、時間が経つと分解されていきます。効果の持続期間は通常12~24か月程度といわれています。そのため、効果を維持するには定期的に治療を続ける必要があります。(15)
ボツリヌス菌が産生する成分を加工したタンパク質の製剤を注入する施術です。ボツリヌス菌には、「筋弛緩作用」という「筋肉をリラックスさせる働き」があり、表情筋の緊張が原因で生じる眉間や目尻の表情じわの解消に有効です。ボツリヌス注射も時間の経過とともに効果が薄れていきます。個人差がありますが、一般的には3~4か月ほど効果が持続します。(3)
真皮層の変化・衰えによって生じる大じわに効果的な治療法のひとつです。レーザーで、光エネルギーを熱に変換し、コラーゲンやエラスチン産生の活性化を狙います。(3)
たるみじわの改善には、熱エネルギーの刺激を利用したサーマクールや高密度焦点式超音波(HIFU・ハイフ)、皮下組織に特殊な糸(時間が経てば溶解する)を通して固定するスレッドリフトなどで、皮膚のたるみを引き締める方法も効果的です。(3)
ナイアシンアミドのように、しわ改善が期待できる成分が配合された化粧品で日々のスキンケアを行いつつ、スキンケアでは改善が難しい表情じわ、たるみじわなどの大きなしわは美容医療の力を借りるなどして上手に補い合い、気になる肌のお悩みを対策していけるとよいですね。
参考文献
(1) 長沼 雅子: 日本香粧品学会誌. 2015;39(4):275–285
(2) 楊 一幸: 日本香粧品学会誌. 2019;43(2):113–118
(3) 川田 暁:美容皮膚科ガイドブック第3版.中学医学社2023
(4) 田中 浩: 日本香粧品学会誌. 2019;43(1):39–43
(5) 石田 森衛, 大林 典彦 他: 顕微鏡.2013;48(1):26-32
(6) Akira KAWADA, Akira DATE, et al.: The Journal of dermatology. 2008;35(10):637-642
(7) 尾見 徳弥: 美容皮膚医学BEAUTY. 2022;5(6):28-33
(8) 丹野 修: Fragrance Journal. 1999;27(10):23-28
(9) Weltert, Y. & Chartier, S. et: Nouvelles Dermatologiques. 2004;23(7):385-394
(10) 安田 利顕,漆畑 修:美容のヒフ科学 改訂10版:南山堂.2021
(11) 松永 由紀子: 美容皮膚医学BEAUTY.2022;5(6):9-16
(12) 厚生労働省「医薬品のリスクの程度の評価と情報提供の内容等に関する専門委員会の第5回資料4-32」
(13) 公益社団法人ビタミン・バイオファクター協会「ナイアシンとは?」
(14) 日本化粧品工業会「化粧品Q&A」
(15) 古山 登隆:解剖から学ぶヒアルロン酸注入療法:メディカルレビュー社.2020
群馬大学医学部医学科卒業。東京大学医学部医局後、形成外科分野において数多くの手術経験を積む。美容クリニック勤務を経て2021年医療法人社団桜恵会THE ONE.を開院。日本形成外科学会認定専門医。日本美容外科学会(JSAPS)広報委員会委員。
これまでに積み上げた確かな技術と実績で、数多くの患者様から信頼を得ている。
現在、正しい美容知識の普及のため、メディア、執筆、商品開発など幅広い分野に活動の場を広げている。
THE ONE.
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