美容クリニックを探す際、ホームページやSNSに載っている症例写真をチェックするよう勧められることが少なくありません。なぜ、症例写真を確認することが重要なのでしょうか。その理由や知って役立つチェックポイントをエルムクリニック 福岡院の白水 先生に教えていただきました。

監修・取材協力:白水 翼 先生(エルムクリニック 福岡院 統括院長)

なぜ症例写真を確認することが大切?

症例写真は、美容医療だけに関わらず、たくさんの大事な情報が詰まっています。

なかでも美容医療の場合は、施術による効果や変化の“程度”を視覚的に知ることが重要です。施術による効果や変化は、文章だけだと期待値やイメージの差が生じやすいので、この差を埋めるために症例写真は役立ちます。また、昨今は新しい施術が多く登場しているので、どんな施術かを知るための目安にもなるでしょう。さらに、医師の技量や得意とする施術、美的感覚などを判断することもできます。

症例写真で確認すべき6つのポイント

症例写真の重要性がわかったところで、確認する際に注意すべきポイントを白水 先生に解説いただきました。

1.撮影時期が明記されているか

まずは、術後の写真がいつ撮影されたものなのか、明記されているかどうかをチェックしましょう。

クリニックのホームページやSNSに載せる術後の写真には、「施術直後」なのか「施術1週間後もしくは1か月後」なのかなど、詳細な説明を入れるというルールが、医療広告のガイドラインで定められています。(1)

撮影時期も含めた、説明のない写真を載せているのはガイドラインに違反していることになるため、注意してください。

2.撮影時の条件は同じか

症例写真は、施術前後の違いを比較できます。施術による効果や変化だけを比較するには、撮影する場所やカメラの角度、明るさなどの条件を、施術前後でできるだけ同じにすることが重要です。

カメラと被写体の距離、ライティング、カメラの種類、撮影時の姿勢など、処置した箇所以外に違っているところはないか見比べてみてください。

症例写真の確認ポイントは同じ条件で撮影されているか

「たくさんある症例写真のうち、施術後の経過の写真でメイクをしているものがあった」という程度なら、何かしら避けられない事情があったと考えることもできます。しかし、多くの症例写真が施術前後、異なる条件で撮影されている場合、適切な症例写真とは言い難いでしょう。

3.複数の時点の写真が掲載されているか

必須ではありませんが、施術後の経過が、例えば1か月後と3か月後と半年後のように複数の時点で確認できるのはよい症例写真だと思います。

効果のピークや持続期間、ダウンタイムなどを知る目安として役立ちます。

4.症例の数は十分か

症例写真を掲載するには、患者さんの承諾が必要です。承諾を得たものしか載せられないので、症例として紹介されているものの数は、実際に行った治療数よりも少ないのが通常です。また、複数の医師が所属している美容クリニックと、医師が一人で運営している美容クリニックとでは、症例の数は異なります。

それらを踏まえたうえで、掲載されている症例写真の数をチェックしてみましょう。

数のほか、同じ施術の症例写真が複数あるかどうかも重要なポイントです。同一の施術について複数の症例写真が掲載されていて、仕上がりを見ても問題ないと思えるクリニックを選ぶことをおすすめします。

5.自分の年代に近い症例写真があるか

自分の年代に近い症例写真を確認するようにしましょう。施術の効果や変化をよりリアルに確認できます。異なる年代――例えば50代の患者さんが20代の方の症例を参考にすると、顔の状態が全く異なるので、治療後の仕上がりに満足しにくいケースが起きてしまいます。

また、できるだけ幅広い年代の症例写真が載っていると理想的です。

6.施術の内容が詳しく明記されているか

施術前後で効果や変化がハッキリわかるのは魅力的に感じますが、使用した薬剤の量や施術の回数・頻度などが多くないかを確認することも大切です。

これらが多いほど、費用が高額になっていきます。

少なければ当然費用を抑えることができるので、自分の望む効果や変化がどんな内容・費用が必要なのかをチェックしておきましょう。

「切らない」美容医療の症例写真のチェックポイント例をご紹介

昨今は、従来の“整形”の枠に入らない、メスを使わずに美しくなる「切らない」美容医療という選択肢が選ばれるケースがあります。

今回は「切らない」美容医療のなかからヒアルロン酸注射ボツリヌス注射糸リフトについて、施術の概要とともに、症例写真の具体的なチェックポイントを伺いました。
※国内未承認治療を含みますが、それらを推奨するものではありません

ヒアルロン酸注射

ヒアルロン酸注射は、私たちの体内に広く存在する物質であるヒアルロン酸を体組織に注入する治療です。(2)

硬さや材質の違う種類のヒアルロン酸製材がさまざまあり、使用する部位やお悩みに合わせて、適した製材を使い分けています。

・ヒアルロン酸注射でアプローチできるお悩み(2),(3)

ヒアルロン酸注射でアプローチできる部位はゴルゴライン、ほうれい線、マリオネットライン、フェイスライン、あご、目の下の小じわやたるみの陰影によるクマ、ボリューム不足による頬のコケ、肌の乾燥、唇のボリューム不足

上記のポイントのほかに、加齢によって目立ち始める、こめかみや額(おでこ)の凹みを整えることも可能です。(2)

なお、ヒアルロン酸注射は、患者さん自身は効果を実感しやすいものの、第三者が客観的に見た場合には、治療した部位・方法によってハッキリした変化を感じにくいこともあるそうです。

具体的に挙げると、加齢のメカニズムに合わせて顔全体を治療(トータルフェイシャルトリートメント)した場合です。

ヒアルロン酸注射の症例写真を確認する際は、前述のポイントを踏まえつつ、特にどのくらいの量(本数)のヒアルロン酸製材を使用しているか、をチェックすることをおすすめします。

ボツリヌス注射

ボツリヌス注射は眉間や目尻の表情じわの改善が期待できると説明を受ける女性

ボツリヌス注射は筋肉の緊張をほぐす作用を有するボツリヌストキシンを注入する治療です。筋肉がリラックスした状態になることで眉間目尻の表情じわの改善が期待できます。(4),(5)

一般医療では重度の腋窩多汗症(わきの多汗症)や眼瞼けいれん、斜視などの治療にも使用されています。 

ボツリヌス注射の症例写真は、無理にしわを寄せるなどの表情を作り、施術前後の効果・変化をよく見せようとする悪質なケースがあります。

私としては、写真よりも自然な表情の動きが確認できる動画で施術前後を確認することをおすすめします。

糸リフト(スレッドリフト)

糸リフトのイメージ

糸リフトは、特殊な糸を用いて加齢によって垂れ下がった皮膚や皮下脂肪を引き上げる施術です。(6)

糸リフトは医師の技量により引きつりや凹凸が起こるリスクがあります。(7) そのため、症例写真をチェックする際は以下2つをより重点的に確認するとよいでしょう。

  • 複数の時期…施術前、施術直後、1か月後、半年などの経過が確認できるか
  • 特定の部位だけに寄らず、顔全体の様子を確認できるか

症例写真は多少割り引いて見るくらいがちょうどよい?

症例写真は医師や美容クリニック選び、そして施術選びの重要な指標ですが、過信しすぎないようにしましょう。

施術の効果や仕上がりは患者さん一人ひとりの顔の状態や体質などによって異なります。また美容医療は魔法ではありません。症例写真だけを見てイメージを膨らませすぎず、カウンセリングで医師としっかり話し合うことが大切です。

参考文献
(1) 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第4版)令和6年3月作成」
(2) 古山 登隆:解剖から学ぶヒアルロン酸注入療法:メディカルレビュー社.2020
(3) KM Kapoor,et al.:Clin Cosmet Investig Dermatol.2021;14:1105-1118
(4) 古山登隆,井上 香:美容皮膚医学 BEAUTY.2020.3(6):45-54
(5) 古山 登隆,海野由利子,砂川恵子,青木和香恵:目もとの上手なエイジング―眼瞼下垂から非手術的美容医療,エイジング世代のメイクアップまで―.全日本病院出版会,2021
(6) 鈴木 芳郎:Bella Pelle.2017.2(4);24-29
(7) 杉野 宏子:美容皮膚医学BEAUTY.2023.6(3);38-47

監修・取材協力

エルムクリニック 福岡院 統括院長 白水 翼 先生

エルムクリニック 福岡院 統括院長 白水 翼 先生

広島大学医学部医学科卒業(2010年)。佐賀県病好生館、九州大学病院、JCHO九州病院、福岡赤十字病院、北九州市立医療センター、大分県立病院、九州医療センター勤務を経て、2020年4月美容皮膚科エルムクリニック 福岡院に入職。現在は統括院長を務める。

日本美容皮膚科学会/ジュビダームビスタ認定医/ボトックスビスタ認定医/化粧品成分検定1級取得

エルムクリニック 福岡院

住所:福岡県福岡市中央区大名2-2-7 大名センタービル3F

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