以前より身近になった美容医療。とはいえ、「美容医療についてしっかりとはわかっていない」という人も多いのではないでしょうか?

そこで、美容医療デビューする際に知っておきたい基本知識について、マリポサビューティークリニック 理事長の広島 光恵 先生にお話を伺いました。

監修・取材協力:広島 光恵 先生(マリポサビューティークリニック 理事長)

美容医療とは?美容医療の役割や美容整形との違いなどを解説

美容医療のイメージをする女性

そもそも、「美容医療」とは具体的にどのようなことを指すのでしょうか?

まずはその役割や、混同しやすい内容との違いを解説します。

1.美容医療の役割

美容医療とは、自分の意志で望み「自分らしい美しさを求めて見た目の改善を図るための医療」です。

美容医療は、美しさを手に入れる手助けをし、人生に彩を添えてくれますが、治療後の満足度は個人によって差があります。そのため、トラブルにもつながりやすいデリケートな分野ともいえます。トラブルを避けるためにも、治療を受ける前に正しい知識を身につけておくことが大切です。

2.美容医療と美容整形の違い

美容医療にはさまざまな治療の選択肢があり、大まかに「美容皮膚科」「美容内科」、そして「美容整形(外科)」などに分けられます。なかでもメスを使う外科的施術を「美容整形」と呼ぶことが多いです。(1) 
ただし、医療法上の正式名称ではありません。

3.美容医療は自由診療――自由診療と保険診療の違いは?

日本の医療には、保険診療と保険外診療(自由診療)があります。大きく以下のような違いがあります。

保険診療とは

保険診療とは公的医療保険が適用される診療のこと。

簡単にいえば、病気(疾患)やケガの治療は保険診療で、患者さんの自己負担額は1~3割程度です。

※全額公費負担の場合もあります

自由診療とは

自由診療は治療の価格をクリニックの判断で決められ、全額患者さんの自己負担です。

美容医療は技術の進歩が速いことや、病気やケガを治すためではなく、美しくなるための治療がほとんどなので、基本的に自由診療が該当します。

知っておくとよいポイントとして、保険診療は自己負担額が少ないものの、適用される治療法が決まっています。一方、自由診療は自己負担額が多いものの、治療法の選択肢が広がるというメリットがあります。

なお、美容医療の診療のなかには保険診療が適用になるケースもあります。例えば、ニキビです。ニキビは「尋常性ざ瘡」という脂腺の疾患なので、症状を治すための治療は保険診療の適用となることが多くあります。しかし、ニキビ跡をなくすための治療は、美しさを求める目的になるので自由診療となるのです。

違いを判断するのは難しいので、美容医療は基本自由診療と考え、受診いただくとよいと思います。

4.美容医療の種類

さまざまな選択肢がありますが、大きく分けると以下の4つに分けられます。

  • メスを使う外科的手術
  • 注射や機器などによる、メスを使わない治療
  • 医薬品(内服薬・外用薬)による治療
  • 化粧品・サプリメントによるホームケア

また、美容クリニックに来院する目的は、大きく分けて2つあります。

一つ目はいまよりキレイに、魅力的になるための見た目の改善、二つ目はしわたるみシミ、ニキビなどの肌悩みの解消です。

美容クリニックでは、患者さんが求めるゴールや顔の状態、体質、予算などを踏まえた上で適切な治療法を提案し、相談しながら治療を進めていきます。

まずは「切らない」美容医療から始めてみては?

美容医療のなかでもメスを用いない治療を選択されるケースが増えています。「切らない」治療は手術に比べて体の負担が少なく、ダウンタイムも短いので、日常的なケアの一環として取り入れやすいでしょう。

今回は代表的な「切らない」美容医療の治療法について、広島先生に詳しく教えていただきました。

※国内未承認治療を含みますが、それらを推奨するものではありません

ヒアルロン酸注入治療

私たちの体内に広く存在する物質であるヒアルロン酸を体組織に注入する治療です。一般の医療では関節や目の治療に使われています。

硬さや材質の違うさまざまな種類のヒアルロン酸製材があり、美容医療では使用する部位やお悩みに合わせて、適した製材を使い分けています。

ヒアルロン酸注射でアプローチできるお悩み(3),(4),(6)

ヒアルロン酸注射でアプローチできる部位はゴルゴライン、ほうれい線、マリオネットライン、フェイスライン、あご、目の下の小じわやたるみの陰影によるクマ、ボリューム不足による頬のコケ、肌の乾燥、唇のボリューム不足

ダウンタイムが数日~1週間程度と手術と比べて短く、日常生活に支障が生じにくいのもメリットといえるでしょう。(2)

ボツリヌス治療

筋肉の緊張をほぐす作用がある ボツリヌストキシンを注入する治療です。筋肉がリラックスした状態になることで、眉間目尻の表情じわを改善する効果が期待できます。(5),(6)

ボツリヌストキシンは、一般医療では重度の腋窩多汗症(わきの多汗症)や眼瞼けいれん、斜視などの治療にも使用されています。

照射治療(レーザー、HIFUなど)

レーザー、フラッシュランプ、高周波(RF)、高密度焦点式超音波(HIFU)などを照射する機器によって皮膚の表面や皮下脂肪にアプローチし、シミやしわ、加齢に伴うたるみなどを治療します。(7)

一度の治療で劇的な変化をもたらすものではありませんが、日常生活に支障が生じるようなダウンタイムが少なく、顔面全体を施術できるというメリットがあります。(7)

参考文献
(1) 公益財団法人 日本整形外科学会ホームページ「整形外科と美容外科」
(2) 大慈弥 裕之:ヒアルロン酸注入治療安全マニュアル. 克誠堂出版. 2018.
(3) 古山 登隆:解剖から学ぶヒアルロン酸注入療法:メディカルレビュー社.2020
(4) KM Kapoor,et al.:Clin Cosmet Investig Dermatol.2021;14:1105-1118.
(5) 古山登隆,井上 香:美容皮膚医学 BEAUTY.2020.3(6):45-54
(6) 古山 登隆,海野由利子,砂川恵子,青木和香恵:目もとの上手なエイジング―眼瞼下垂から非手術的美容医療,エイジング世代のメイクアップまで―.全日本病院出版会,2021
(7) 川田 暁:美容皮膚科ガイドブック第3版.中学医学社2023

監修・取材協力

マリポサビューティークリニック 理事長 広島 光恵 先生

マリポサビューティークリニック 理事長 広島 光恵 先生

名古屋大学医学部卒業(2001年)。安城更生病院、名古屋大学附属病院、小牧市民病院、江南厚生病院、総合病院南生協病院での勤務を経て、2013年に広島皮ふ科を開院。院長を務める。その後、マリポサビューティークリニックを開院。2020年より医療法人 恵蝶会 理事長を務める。その人本来の良さや美しさを損うことなく、より若々しく綺麗になるをモットーに、美容のかかりつけ医として選んでいただけるクリニックを目指している。

医学博士/日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医

マリポサビューティークリニック

住所:愛知県稲沢市稲島東 2丁目 44-2

前の記事へ
次の記事へ