ピコレーザー(ピコ秒レーザー)とは、ピコ秒(1兆分の1秒)単位でレーザーを照射し、肌悩みを改善する美容医療技術です。

肝斑やシミの改善、肌の色調調整などに効果があるといわれています。従来のレーザー(ナノレーザー)との違い、メリット・デメリット、費用やダウンタイムなどについて、レーザー治療に詳しい、天神竹井皮膚科 美容皮膚科の竹井 賢二郎 先生に教えていただきました。

※国内承認機器が存在しない治療、また適応外治療を含む可能性がありますが、それらを推奨するものではありません

監修・取材協力:竹井 賢二郎 先生(天神竹井皮膚科 美容皮膚科 院長)

ピコレーザーとは

ピコレーザーの「ピコ」とは、レーザーが照射されている時間(パルス幅)を示します。「ピコ秒」という短い単位で照射されるレーザー光のことを、ピコレーザー(ピコ秒レーザー)と呼んでいます。主にシミの除去などに使われます。(1)

ピコレーザーは、ピークパワーという瞬間的な光の強さが非常に高く、シミの原因となるメラニン色素などをピンポイントで、周りの組織にダメージを与えずに、効率よく破壊できます。また、照射時間が非常に短いので、熱が広がる前にシミを破壊でき、他のレーザー治療と比べて副作用のリスクを抑えられるのが特徴です。(1)

ピコレーザーを使った治療には、大きく二つの方法があります。(1)

  1. 1回の照射で高い治療効果が期待できるが、副作用のリスクが高い方法:(例)ピコスポット
  2. 複数回の照射が必要だが、副作用が起こりにくい方法:(例)ピコトーニング、ピコフラクショナル

具体的な効果については、のちほど解説します。

ピコ秒とは

ピコ秒は時間の単位であり、1兆分の1秒です。従来、シミの治療にはナノ秒レーザーが使用されていました。ナノ秒は10億分の1秒を意味します。ピコレーザーは、ナノ秒レーザーの1,000分の1の時間単位で照射できるレーザーです。(1)

ピコレーザーで期待できる効果

ピコレーザーは、シミを中心とした以下のような肌の色素沈着の改善に役立つことが期待されます。

ピコレーザーに期待できる効果(シミやADM、小じわ、ニキビ跡、毛穴、タトゥー、アートメイク)

老人性色素斑、ソバカス、炎症後色素沈着などのシミ

老人性色素斑、ソバカス、炎症後色素沈着、肝斑

老人性色素斑

老人性色素班とは、紫外線によりメラニン色素が肌の内側にたまってできる、最も一般的なシミのこと。(1) 中年以降によく見られます。周囲の肌との境目が明確なので、改善には高出力でメラニン色素をピンポイントに破壊するピコスポットが適しています。(2),(3) ただし、のちほど説明する副作用もあり、注意が必要です。

そばかす(雀卵斑)

直径2~3ミリの小さな点状のシミが鼻から頬、まぶたにかけて散らばるようにできるのが、そばかすです。スズメもしくはウズラの卵の模様に似ていることから雀卵斑とも呼ばれます。主に色白の人に見られ、遺伝的要因が大きいといわれています。(1),(2) 広範囲を治療する必要があることから、顔全体に低出力で照射するピコトーニングが適しています。完全に消すのは難しくても、薄く目立たなくすることが可能です。濃い部分にピンポイントで、ピコスポットを使うのもよいでしょう。(1),(3),(4)

炎症後色素沈着

ニキビや虫刺され、やけどなどの炎症をきっかけに、肌内部にメラニンが溜まり、色素沈着してしまうことを炎症後色素沈着といいます。(1) この場合も治療にはピコトーニングを用いて、低出力でメラニンを徐々に排出する方法が適しています。場合によっては、ピコフラクショナルで肌のターンオーバーを促進し、色素沈着の改善を早めるのも有効です。(1),(5)

肝斑の治療には注意

肝斑(かんぱん)は、主に30代以降の女性の顔にできるのが特徴です。頬骨のあたりに左右対称にでき、まだらで境界がぼんやりとしています。原因は、6~7割が紫外線とされており、なおかつ女性ホルモンが関係していることがわかっています。(1), (2)

ピコレーザーで肝斑を治療するには、メラノサイトを刺激しないように低出力のピコトーニングを照射し、メラニンを少しずつ減らしていくのが基本です。(8),(9)

しかし、肝斑へのレーザー照射では、一時的に色素が薄くなっても、その後、悪化したり、白斑(はくはん)といって肌の色素が抜けて白くなってしまったりする副作用が生じることが少なくありません。(1) こうした副作用は1~2週間の短いスパンで照射を繰り返したり、間隔を空けていても高出力で照射したりすると出やすくなることがわかっています。(1)

したがって肝斑には、肌の状態を見ながら十分な間隔を空けて、適切な出力でレーザーを照射するとともに、(1) トラネキサム酸などの内服薬や外用薬を併用し、(8), (9) 肌の真皮層に働きかける治療をすることが大切です。

小じわ

口元の小じわ

小じわは、主に加齢や肌表面の乾燥によって表皮に現れます。しわのなかでは比較的初期の状態です。(1)

改善にはピコフラクショナルが適しています。ピコフラクショナルは、特殊なレンズを使用し、レーザーをマイクロニードル状に変化させて照射する方法です。照射後には、肌内部の真皮にあるコラーゲンやエラスチンといった肌の弾力性、保水力に関わる成分がつくられやすくなる効果が認められています。(1) そのため、肌本来の弾力を取り戻し、小じわを改善させる効果が期待できます。

ニキビ跡や毛穴の目立ちまた引き締め

ニキビ跡は、ニキビが悪化したダメージが肌に残り、跡になってしまったもの。(6) 毛穴の目立ちは、皮脂の過剰な分泌や肌の弾力不足などにより、毛穴周辺の肌が厚くなったり、たるんだりして生じるものです。(7) ピコフラクショナルの照射によって、肌のハリ改善や毛穴の引き締め効果が期待できることがわかっており、これらの症状の改善につながると考えられます。(1)

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)などのアザ

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス:Acquired Dermal Melanocytosis)とは、頬に左右対称にあらわれる米粒から小豆粒ほどの大きさのシミのことです。20~30歳頃にあらわれ、真皮にできることから、このような名前が付いています。(4) ADMや太田母斑(顔面にできる青アザ)のように、真皮にメラノサイトが集中することで肌の色が変わって見える症状も、ピコレーザーで改善することが可能です。広範囲に照射ができるピコトーニングを複数回行うと、効果が期待できます。(4)

タトゥー・アートメイク

ピコレーザーをピコスポットで照射することで、高いピークパワーで色素の粒子を細かく破き、自然に排出されやすくします。(8) これにより、タトゥーやアートメイクを効率良く治療する効果が期待できます。複数回の照射は必要ですが、従来のナノレーザーよりは少ない回数で済むうえ、ほとんどのタトゥーを取り除くことが可能です。(1),(8)

ナノレーザーとピコレーザーを照射したときの色素粒子のイメージ

文献(13)を参考に作成

ピコレーザーのメリット

ここであらためて、ピコレーザーのメリットをご紹介します。(1),(8)

  • 強い光を瞬間的に照射することで、シミなどをピンポイントで効率よく破壊できる
  • 周りの組織にダメージを与えにくく、痛みの軽減やダウンタイム短縮につながる
  • 炎症が少なく済むため、施術後の色素沈着が起こりにくい
  • タトゥーの除去に関しては、少ない施術回数で効果を実感しやすい

ピコレーザーの副作用とリスク

ピコレーザーの照射による副作用やリスクは、従来のレーザー治療と基本的に同じです。施術中の痛みと、施術後の肌状態の変化に大きく分けられます。

光で熱を加えるため、個人差や照射モードにもよりますが、施術中には痛みを感じることがあります。

また、施術後には以下のような副作用が生じることがあります。

赤み・腫れ

レーザーを当てた部分に赤みや腫れが出ることがあります。通常は数日でおさまります。(10),(11)

ただれ

強い光を照射するピコスポットの場合、肌の表面が炎症を起こし、ただれることがあります。(10),(11)

炎症後色素沈着

施術後、一時的にシミが濃くなったように見えることがあります。多くの場合、時間とともに薄くなりますが、完全に消えるまで数か月かかることもあります。(10), (11)

かさぶた

これもピコスポットの場合ですが、施術後、薄いかさぶたができることがあります。無理にはがすのはやめましょう。(10),(11)

そのほか、ごくまれに水ぶくれ、色素脱失(白斑:レーザーを当てた部分の色素が抜け、白く見えること)、ケロイドのように傷跡が盛り上がって残ることもあります。(10),(11)

これらの副作用は、必ず起こるわけではありません。また、程度には個人差があります。気になる症状が出た場合は、すぐに施術を受けたクリニックに相談しましょう。

ピコレーザーの施術の流れ

ピコレーザーによる治療は、以下のステップで行います。

  • 洗顔(メイクオフ)
  • 診察(カウンセリング)
  • ピコレーザー照射
  • アフターケア

レーザー治療は肌を清潔にした状態で行います。その後、施術室に入り、レーザーの光から目を守るために目を守るゴーグルを着用して、レーザー照射を受けます。処置完了後は、問題がなければ帰宅が可能です。

※監修医師の臨床経験による

ピコレーザー治療後の経過とアフターケア

広範囲に光を照射するピコトーニングの場合、治療後は肌が一時的に赤くなる程度ですが、強い光をピンポイントで照射するピコスポットの場合、治療後には以下のような経過をたどります。(4)

  1. レーザー照射後に患部が一時的に白くなる
  2. その後、患部が黒くかさぶたのようになる(ならない場合もある)
  3. 1週間程度で新しい皮膚ができ、自然にかさぶたがはがれる
  4. かさぶたがはがれた部分が徐々にピンク色になる
  5. およそ1~2か月で落ち着き、元の肌に馴染む

治療後は必ず紫外線対策を

レーザー治療後は、紫外線対策が必須です。肌が元の状態に戻る間にメラニンの産生が促され、色素沈着してしまうことがあります。(1),(12) 施術箇所を中心に必ず日焼け止めを塗り、対策をしましょう。

ピコレーザーに関するよくある疑問

ピコレーザーに関する気になる疑問を、竹井 先生に教えていただきました。

ピコレーザーの料金目安は?

当院では1センチまでが22,000円、その後、1ミリ大きくなるごとに2,200円ずつ加算しています。広範囲に照射する場合には、10センチ四方33,000円から可能です。

クリニックによって異なりますので、お近くのクリニックの料金を確認してみるのがよいでしょう。

ロングパルスレーザー、Qスイッチレーザーとの違いは?

レーザー治療の選択肢として、「ロングパルスレーザー」や「Qスイッチレーザー」というレーザーについて見聞きしたことがある方は少なくないでしょう。これらのレーザーとピコレーザーはどのように異なるのでしょうか?

レーザーの種類時間の単位
ピコレーザーピコ秒(1兆分の1秒)
ロングパルスレーザーミリ秒(1,000分の1秒)
Qスイッチレーザー一般的にはナノ秒(10億分の1秒)
ピコ秒(1兆分の1秒)も可能
※レーザー光を発生させるための技術であり、
パルス幅そのものを意味しているわけではない

文献(1)を参考に作成

ロングパルスレーザーとピコレーザーの違い

ロングパルスレーザーとピコレーザーは、レーザーが照射される時間(パルス幅)が異なります。ピコレーザーはピコ秒(1兆分の1秒)単位で、ロングパルスレーザーはミリ秒(1,000分の1秒)単位で光を照射します。つまり、両者のパルス幅には10億倍の差があります。(1)

Qスイッチレーザーとピコレーザーの違い

Qスイッチレーザーとピコレーザーは、同じ基準で比べることができません。なぜなら「Qスイッチ」とはレーザー光を発生させるための技術であり、パルス幅そのものを意味しているわけではないからです。(1) Qスイッチ技術を使って照射されるレーザー光がQスイッチレーザーであり、レーザーのパルス幅をピコ秒に設定することで、ピコ秒のQスイッチレーザーが実現できます。

なお、美容医療において一般的に使われているQスイッチレーザーは、パルス幅がナノ秒単位のレーザーです。そのことから、Qスイッチレーザー=ナノレーザーとして認識される場合もあります。(1)

Qスイッチレーザー=ナノレーザーとした場合、ピコレーザーはQスイッチレーザーよりパルス幅が短くピークパワー(瞬間的な光の強さ)が少ないため、シミを破壊するときの周囲組織への刺激が少ないといえます。

ピコレーザー(ピコスポット)でシミが消えないことはある?

ピコスポットは、消したいシミを消失させるのに十分な強さで十分な回数照射すれば、しっかりとシミを消すことができます。

ただし、難しい症例に手を出してしまうと、当てる回数や強さを増やしてもシミが消えず、さらに副作用が強く出てしまうことがあるかもしれません。

ターゲットとなるシミに合わせて、レーザーの種類と強さ、回数などを適切に見極めて照射することが大切です。

※監修医師の臨床経験に基づく

ピコレーザーは何回受ければいい?

ピコスポットで、気になるシミをピンポイントで消したい場合は、基本的に1回の施術で効果を実感いただけます。(1) 診断と出力が適切ならば、一度の照射でシミを破壊することができるためです。ただし、脂漏性角化症のように表皮が厚くなっている場合は、ピコレーザーの光が深い部分にあるメラニン色素を一度で破壊できず、複数回の照射が必要になることもあります。(1)

肌の再生を促すピコフラクショナルと、顔全体に低出力で照射し、広範囲のシミを治療するピコトーニングは、複数回の照射が前提です。治療の頻度は、肌の状態に合わせて個別に設定されますが、(1) 当院では「月に1回程度を5~6回行うのが目安です」と説明しています。

※監修医師の臨床経験に基づく

ダウンタイムはある?

ダウンタイムは照射方法によって異なります。

ピコスポットは、そもそも副作用があることを引き換えに高い治療効果を得る方法ですので、ダウンタイムはあります。(1) 照射後は数日間、患部に赤みが生じた後、かさぶたができ、それが1週間程度すると自然にはがれます。トータルのダウンタイムは7~10日くらいです。肌の状態によっては、これより長くなる場合もあります。ダウンタイム中は紫外線対策をして、摩擦による刺激を避け、くれぐれもかさぶたを自分で無理にはがさないよう注意してください。(1)

ピコフラクショナルは、当てる光の強さによって副作用の出方が異なり、ダウンタイムも変化します。マイルドな強さの光を当てれば、1日で赤みが引きます。しかし、強めの光を当てれば、その分、コラーゲンの産生は促されますが、肌の赤みが引くまでに1週間ほどかかることがあります。

ピコトーニングに関しては、基本的にダウンタイムはないと考えてよいでしょう。照射直後には赤みが生じますが、数十分で収まります。(1)

※監修医師の臨床経験による

ピコレーザーと注入治療を組み合わせ、理想的な肌を目指すのもおすすめ

ピコレーザーは照射方法を変えることで、異なる肌の悩みにアプローチができる治療法です。

シミをとるにはピコスポットが向いています。(1) 加齢などに伴う肌のハリを改善したい場合にはピコフラクショナルが有効です。(1) 広範囲の色素沈着の改善にはピコトーニングという照射方法もあります。(1) このように、複数のさまざまな悩みに柔軟にアプローチできるのが、ピコレーザーの良いところです。

昨今では、ピコフラクショナルと他の美容医療を組み合わせて、肌育治療を行うケースもあります。(1) 例えば、ピコフラクショナルを肌の表面から当てたうえで、肌の保水力を高めるヒアルロン酸製材やヒアルロン酸+アミノ酸の製材などを肌に注入すると、肌の内側からも再生を促すことができます。こうした併用治療は、ピコスポットで生じる副作用の回復時間を短くするのにも有効です。

ピコレーザーを使った治療は、単体でも効果を得ることができますが、他の治療法を組み合わせると、より理想的な肌に近づくことも可能になります。

まずはクリニックでカウンセリングを受け、自分に合った美容医療の選択肢を見つけてみてはいかがでしょう。

参考文献
(1)川田 暁:美容皮膚科ガイドブック第3版. 中学医学社. 2023
(2)一般社団法人 日本形成外科学会. "しみ(色素斑)". 2025. https://jsprs.or.jp/general/disease/biyo/shimi.html, (参照 2025-03-07)
(3)葛西 健一郎:日本レーザー医学会誌: 39(2). 131-136. 2018
(4)中野 俊二:美容皮膚医学BEAUTY. 7(1): 55-64. 2024
(5)佐藤 卓士, 江藤 ひとみ:日本レーザー医学会誌. 37(1): 24-29. 2016
(6)林 伸和:日本香粧品学会誌: 40(1): 12-19. 2016
(7)西島 貴史:日本化粧品技術者会誌. 43(1): 3-9. 2009
(8)大道 和佳, 菅原 順: 美容皮膚医学BEAUTY. 7(1): 80-86. 2024
(9)宮田 成章:日本レーザー医学会誌: 39(2). 137-140. 2018
(10)大城 貴史, 大城 俊夫:日本レーザー医学会誌. 37(4): 427-434. 2017
(11)尾本 大輔 , 西堀 公治:日本レーザー医学会誌. 44(2): 77-82. 2023
(12)尾崎 峰:美容皮膚医学BEAUTY. 7(1): 3-9. 2024
(13)宮田 成章:イチからはじめる美容医療機器の理論と実践 改定第2版. 全日本病院出版会. 2021

監修・取材協力

天神竹井皮膚科 美容皮膚科 院長 竹井 賢二郎 先生

天神竹井皮膚科 美容皮膚科 院長
竹井 賢二郎 先生

2007年 九州大学医学部卒業。2016年九州大学大学院皮膚科学専攻博士課程修了。2019年に天神竹井皮膚科・美容皮膚科を開設。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。日本皮膚科学会認定美容皮膚科・レーザー指導専門医。理論やエビデンスが確立した施術かを見極め、適切な治療を提供できるよう診療にあたっている。

天神竹井皮膚科 美容皮膚科

住所:福岡県福岡市中央区天神2-3-34 新宅興産ビル2階

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