顔のたるみは様々な影響で起こってきますが、基本的には加齢が原因です。加齢によって顔の内部が変化することで、頬など顔のたるみが生じます。
インターネット上では、解消法として筋トレや痩せるのがよいとの噂もありますが、原因をしっかりと突き止めたうえで、効果的な治療法を選択することが大切です。
今回は顔のたるみの原因と改善方法、そして巷にあふれる噂の真偽を湘南美容皮フ科 五反田院の林 篤志 先生が解説します。
監修・取材協力:林 篤志 先生(湘南美容皮フ科 五反田院 院長)
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顔のたるみは様々な影響で起こってきますが、基本的には加齢が原因です。加齢によって顔の内部が変化することで、頬など顔のたるみが生じます。
インターネット上では、解消法として筋トレや痩せるのがよいとの噂もありますが、原因をしっかりと突き止めたうえで、効果的な治療法を選択することが大切です。
今回は顔のたるみの原因と改善方法、そして巷にあふれる噂の真偽を湘南美容皮フ科 五反田院の林 篤志 先生が解説します。
監修・取材協力:林 篤志 先生(湘南美容皮フ科 五反田院 院長)
目次
顔のたるみが生じる主な原因を順にご紹介します。
まず挙げられるのが、顔内部の変化です。
顔は骨・筋肉・皮下脂肪・真皮・表皮の5つの層から成り立っています。これらが少しずつ変化することで、たるみが生じます。(1)
それぞれの変化の様子を確認してみましょう。
骨は、脂肪や皮膚を支える土台です。
加齢にともない、骨密度が徐々に低下すると骨が縮み、支えられていた頬やフェイスラインの皮膚や脂肪などが垂れ下がってたるみができます。(1)
女性は閉経を迎える50歳ごろから骨密度の減少が加速するため、たるみが顕著に現れてきます。(2)
顔のたるみの一因として、加齢にともなって皮下脂肪が元の位置から下に移動することが挙げられます。
特に、頬や口横の皮下脂肪は下垂が起きやすい部分です。下垂した皮下脂肪がフェイスラインや口元にたまると、しわや輪郭のゆがみとなっていきます。(1)
顔には、骨と皮膚をつなぎとめる繊維である「リガメント(支持靭帯)」と、筋肉を覆う「SMAS(表在性筋膜)」という組織があり、これらは顔を支える重要な役割を果たしています。(1)
年齢を重ねると靭帯やSMASがゆるむことで組織を支えきれなくなるため、たるみが生まれてきます。
年齢を重ねるにつれて、表情筋の緊張が強くなることでしわができたり、お顔の筋肉自体が衰えることでたるみも生じたりしてきます。(3)
女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌は、皮膚のハリや弾力性に大きく関わっていますが、エストロゲンは40代以降急激に減少します。(4)
その結果、コラーゲンなどを産生する線維芽細胞にも機能低下が起こり、皮膚のハリが低下して皮膚のたるみが目立ちます。(3)
顔のたるみはUVAという紫外線による「光老化」によっても生じます。
紫外線は皮膚にダメージを与え、皮膚の奥にある真皮層のコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などのハリの保持に有用な成分を変性させます。(4)
紫外線はそれらの成分を産生する線維芽細胞も損傷させてしまうため、皮膚がゴワゴワになり弾力が失われて、たるみが目立ちやすくなるといえるでしょう。(4)
糖化とは、タンパク質や脂質が糖と結びついて変化してしまうことです。
卵や牛乳と糖で作るホットケーキを イメージしていただくと分かりやすいかと思います。一般にこれはメイラード反応と呼ばれます。
皮膚のハリを保つコラーゲンもタンパク質の一種ですが、これが糖化すると本来の構造が失われて皮膚の弾力が低下し、たるみにつながっていきます。(5)
顔のたるみは、歯並びや嚙み合わせによっても生じます。
歯並びが悪かったり、虫歯などで歯を失ったりしてかみ合わせが悪い状態が続くと、土台となる顎骨が痩せ、その上にある組織を支えきれなくなることでたるみが生じやすくなります。(6)
また、噛む筋肉である咬筋が衰えるとフェイスラインのゆがみやたるみに繋がります 。
※監修医師の臨床経験に基づく
顔のたるみの改善方法はインターネットをはじめ、さまざまなメディアで取り上げられていますが、それらは対策として適切といえるのでしょうか。林 先生に伺いました。
※監修医師の臨床経験に基づく
「表情筋が衰えると、たるみが生じやすくなるので、口元の口輪筋や目周りの眼輪筋のエクササイズで鍛えたほうがいい」
「僧帽筋(そうぼうきん:後頭部から背中にかけて広がる筋肉)が衰えたり硬くなったりすると表情筋の動きが妨げられ、たるみにつながる」
上記のような情報をインターネット上で見かけることがありますが、表情筋や僧帽筋などのエクササイズは、顔のたるみの対策に有効な方法とはいえません。
表情筋については、話す・笑うといった日常的な動作でじゅうぶん鍛えることが可能といわれています。
むしろ、表情筋体操のようにギュッと目をつむったり目を見開いたり、わざと大きく口を開けたりすることは、かえってしわを増やし、老け見えの原因になるのでやらないほうがよいでしょう。
また、歯の食いしばりが僧帽筋の緊張につながり、肩こりやエラ(咬筋のふくらみ)の原因になることはあるものの、僧帽筋のこりや緊張が顔のたるみを引き起こすかどうかは定かでありません。
肩こりの解消に僧帽筋をほぐすのはおすすめですが、顔のたるみの対策として有効とは断定できないでしょう。
皮膚のマッサージには、皮膚の血液やリンパの循環を促すことで 、リラックスに一定の効果をもたらすと考えられています。(4)
一方で、過度なマッサージをすることは皮膚や靱帯(じんたい)が伸びる原因になるため、たるみの改善には有効とは言えず、むしろたるみの原因になることがあります。また、強く皮膚を擦ることで色素沈着となる可能性もあるため、注意が必要です。
皮膚はゆで卵と同じくらい繊細に扱い、なるべく触らないようにしましょう。
「顔のたるみは舌の筋力が衰えてできるので、舌回し体操などで舌の筋力を鍛えよう」という情報を見かけることもありますが、舌の位置や筋力がどこまで顔のたるみに影響するかはわかっていません。
くれぐれも無理のない範囲にとどめましょう。
保湿をして乾燥していた皮膚に潤いを与えることで、表面のたるみを目立ちにくくする効果が期待できます。(4)
ただし、スキンケアでアプローチできるのは、皮膚表面の角質のみです。したがって、加齢によって顔内部の変化で生じるたるみの改善までは難しいでしょう。
紫外線対策をすることは、顔のたるみの予防に有効な方法といえます。
地上に届く紫外線のなかでも、UVAはたるみに影響を与えます。波長が長く真皮まで届き、コラーゲンやエラスチンを変性させたり、これらの成分を産生する線維芽細胞を損傷させることで、皮膚の弾力を失われてたるみが生じる原因となります。(4)
シェーディング(陰影を調整して立体感を出す手法)やハイライト(光を集めて立体感を出す手法)でメリハリをつけるなどの工夫をしたメイクには、顔のたるみを目立たなくする効果は期待できるでしょう。
顔のたるみの原因である顔内部の変化を根本から改善する目的で、美容医療は有効です。
美容医療では、自分の顔のたるみが生じる原因を医師が的確に診断してくれます。そして、セルフケアでは難しい顔の内側からアプローチして改善してくれるというメリットも得られます。
早期にたるみを改善したい、ハッキリとした効果を実感したいという場合は、美容医療を選択肢に入れるとよいでしょう。
そのほか、頬や目元など顔のたるみの直接的な改善にはつながらないものの、肌の健康を保つうえで生活習慣の見直しも大切です。
いくつか具体的なポイントをご紹介いたします。
皮膚によいとされる栄養素はさまざまありますが、基本は五大栄養素と呼ばれるタンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取することを大切にしましょう。(4)
運動には、骨密度を増やす効果が期待できます。ウォーキングやジョギングなどで運動をする習慣をつけると、年齢を重ねても骨密度を維持しやすくなり 、たるみ予防になります。(7)
睡眠は皮膚を健康に保ち、顔のたるみ予防につながります。皮膚の修復は眠っている間に主に行われ、ターンオーバーも促されます。できれば毎日決まった時間に、7時間程度の睡眠をとることが理想的です。(4)
顔のたるみを改善する治療法には幅広い選択肢があります。主な治療法は以下の通りです。
※国内未承認治療を含みますが、それらを推奨するものではありません
顔のたるみ改善に有効な治療法の例(1),(3),(8)~(10)
たるみの程度や皮膚の状態、そして求める効果によって適した治療法が異なります。(1),(3),(8)~(10)
例えば、フェイスラインのたるみには糸リフトが高い効果を発揮しますが、頬のたるみの場合は糸リフトよりもヒアルロン酸注入治療のほうが効果的なこともあります。(1),(3)
自身の状態を正しく見極め最適な治療を受けるために、まずは医師の診察を受けることをおすすめします。
顔のたるみ治療においてポピュラーな施術のひとつである、ヒアルロン酸注入治療について詳しくご紹介しましょう。
ヒアルロン酸注入治療は加齢によって起きた萎縮を補うことで、下垂した皮下脂肪を持ち上げたり、輪郭を整えながらたるみの改善をはかる方法です。(1),(11)
ボリュームが減少した箇所にヒアルロン酸を集中的に注入するだけではなく、全体のバランスを見て細かく注入して自然な仕上がりにすることが主流となってきています。(1),(11)
ヒアルロン酸は時間がたつと徐々に吸収されていくため、その時々の顔の状態に合わせてメンテナンスを行うことができます。(1),(11)
頬など顔のたるみに関する気になる疑問を、林 先生に教えていただきました。
上顎骨(じょうがくこつ:上顎の骨)や頬骨が小さく土台が弱い方は、たるみやすい骨格といえます。加齢によってさらに骨のボリュームが少なくなると、脂肪や皮膚が垂れ下がりやすくなってしまいます。
また、お餅のようにやわらかい肌質の方なども、コラーゲンが少ないため、たるみが生じやすい特徴といえるでしょう。(1)
ダイエットをすると、脂肪が減って顔のたるみが解消するといわれることがありますが、一概にそうとはいえません。
ハンモックに乗せていた荷物を減らすことでたわみが少なくなり、顔のたるみが改善したように見えることはあります。しかし、本来はコラーゲンの減少に伴ってハンモックのロープが緩んでしまうことがたるみの根本です。
コラーゲンの生成を促進するような機器治療や、靭帯を支えるヒアルロン酸注入がたるみ治療には有効です。
※監修医師の臨床経験に基づく
また、脂肪には内臓脂肪と皮下脂肪の2種類があります。
ダイエットで最初に減るのは内臓脂肪であり、顔のたるみの原因になっている皮下脂肪の減少はかなりゆっくりです。やっと皮下脂肪を減らせたとしても、全身の皮下脂肪が満遍なく減ってくるため、顔の一部の脂肪を減らすことは非常に難しいです。(12)
したがって、ダイエットによってたるみが解消するというのは、限定的な効果となります。
セルフケアは、顔のたるみを目立ちにくくする効果を一部期待できます。
しかし、加齢による骨や皮下組織のボリュームロスによるたるみを自分の力で改善することはできません。(1)
50代は多くの人が閉経を迎える時期であり、女性ホルモンのエストロゲンが大きく減少します。
エストロゲンの減少は骨が縮む原因になったり、皮膚のハリを失わせたりするため、たるみを実感する人が増えます。(12)
デバイス治療やヒアルロン酸注入にまずは挑戦していただくことがお勧めです。たるみのメカニズムに沿って治療をすることで、確実に効果を実感することができます。
参考文献
(1)古山 登隆:解剖から学ぶヒアルロン酸注入療法:メディカルレビュー社.2020
(2)厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」女性ホルモンとライフステージ
(3)杉野宏子:美容皮膚医学 BEAUTY.2023.6(3);38-47
(4)安田 利顕,漆畑 修:美容のヒフ科学 改訂 10 版:南山堂.2021
(5)Gkogkolou P, Böhm M:Dermatoendocrinol 2012;4:259-70
(6)青木四郎:日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学.2003.23.3-4:214-217.
(7)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015
(8)鈴木芳郎:美容皮膚医学 BEAUTY.2023.6(3);21-27
(9)有川公三:美容皮膚医学 BEAUTY.2023.6(3);65-73
(10)石川浩一:美容皮膚医学 BEAUTY.2023.6(3);83-89
(11)塚原孝浩:美容皮膚医学 BEAUTY.2023.6(3);90-97
(12) 厚生労働省「e-ヘルスネット」メタボリックシンドロームを予防する食事・食生活
山口県出身。2018年徳島大学医学部医学科卒業。東京高輪病院を経て、2020年に湘南美容クリニックへ入職。2022年より湘南美容クリニック技術統括指導医長(皮膚科)、また同年に五反田院院長に就任。
患者様の気になるお悩みを解決するだけでなく、お顔全体がさらに美しくなるような美容皮膚科としてのアプローチに取り組んでいる。
湘南美容皮フ科 五反田院
住所:東京都品川区東五反田一丁目26番14号アトレ五反田14階