首のしわは、顔のようにメイクやマスクでごまかしたり隠したりしにくいもの。それゆえ年齢が出やすいことに悩む人は少なくありません。

首のしわの改善には、さまざまなメディアで保湿クリームによるスキンケアやマッサージなどの方法が紹介されています。しかし、それらが本当に首のしわを消す効果があるのか疑問に思う方も多いのでは?

本記事では、首のしわの原因や改善方法について医師が解説していきます。

監修・取材協力:西川 礼華 先生(湘南美容グループ 皮膚科全体統括)

首のしわの種類とそれぞれの原因

首のしわは、現れ方や原因によって大きく4種類に分けることができます。

種類ごとの原因や詳細を知り、適切な改善方法を見つける手がかりにしていきましょう。

縦じわ

首の縦じわは、顎から鎖骨にかけて縦方向に生じる、細かい帯状のしわを指します。

縦じわは、年齢が上がってきた人や、ダイエットなどで急激な体重の減少などがあった人に多く見られやすい種類のしわです。このしわが目立つようになると、一気に老け込んだ印象を与えることもあります。

縦じわの原因には、主に加齢による「たるみ」が関わっています。

たるみが生じる要因はさまざまですが、首の場合、皮下脂肪の下垂による影響が考えられます。また、フェイスラインを中心に目立ってきたたるみが首におよぶと、たるんだ皮膚が寄り集まり、しわが現れます。

さらに加齢はたるみだけでなく、皮膚のハリ・弾力も低下するため、しわが刻まれやすく、目立ちやすい状態といえます。

加齢以外では、急激に体重が減少した場合、体重が減るスピードに体の組織の変化がついていけず、余ってしまった顔の皮膚や皮下組織がたるんで首にたまり、縦じわになることもあります。

横じわ

首の横じわは、首に横一直線にできるしわのことです。「ネックレスライン」と呼ばれることもあります。

年齢の高い人だけでなく、10代や20代などの若い年代の人まで、年齢を問わず現れやすいしわといえるでしょう。

主に生活習慣が原因で生じるといわれており、スマホやパソコンを見る時にうつむきがちになることや、枕が高すぎることによって顎を引くような姿勢をとり続けると、横じわが刻まれてしまうのです。

さらに年齢を重ねると、縦じわと同様に、たるみや皮膚のハリ・弾力が低下することで、しわが刻まれやすく、横じわが目立ちやすくなります。

縦スジ

首の縦スジは、「イーッ」と首を上に突き出した時などに現れるのが特徴です。正確にはしわではありませんが、「しわ」と呼ぶ人もいるため、ここではしわの一つに数えます。

縦スジが目立つ原因は、加齢と広頸筋(こうけいきん)による影響の大きく2つがあるといわれています。

まず1つ目が加齢です。年齢を重ねることで、たるみで顔や首の皮下脂肪などが垂れ下がり、発達した筋肉…縦スジが目立ちやすくなる傾向があります。

しかし、10代や20代の人でも首の縦スジが目立つ場合があります。それがもう1つの原因といわれている、広頸筋の影響です。

1. 広頸筋とは

広頸筋が発達すると縦スジが目立ちやすくなります。日常生活で自然と鍛えられる筋肉のため、年齢を重ねた人のほうが発達しているのが特徴です。

ただし、発達の度合いには個人差があり、若くても広頸筋が発達している人もいます。特に痩せ型の人のほうが、縦スジが目立ちやすい傾向です。

広頸筋にはフェイスラインを下に引っ張る力があるため、加齢でたるみを生じさせる要因にもなりえます。

乾燥による小じわ

小じわ、いわゆる「ちりめんじわ」が首の皮膚にできて目立ってしまうことも少なくありません。

小じわは、気温や湿度が低い状態が続くことで肌表面の水分が失われて乾燥したり、紫外線に当たって日焼けしたりして、肌のキメが乱れることで生じやすくなります。

年齢に関係なく、日焼けまたは肌が乾燥しがちな人は、首の小じわが気になることもあるでしょう。

首のしわを改善する方法は?医師に聞く、しわ対策のウソ・ホント

ネットをはじめ、さまざまなメディアでは「首のしわを改善する」といわれる方法が取り上げられています。

これらの方法は、本当にしわの改善に有効なのでしょうか? 西川先生に詳しく教えていただきました。

保湿をする

首のしわ対策として、スキンケアアイテムなどによる保湿は有効です。

特に乾燥による小じわには、保湿は欠かせません。

スキンケアする際は、顔と一緒に首も意識的に保湿するようにしましょう。

ただし、種類によっては、縦スジなど乾燥の影響を受けていないタイプもあるので、全ての首のしわを保湿で対処することは残念ながらできません。

紫外線対策をする

首のしわ対策として、紫外線対策は有効です。

紫外線は、皮膚(真皮)にあるコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を変性させる「光老化」を引き起こすため、皮膚がゴワゴワになり、縦じわや横じわが刻まれやすくなってしまいます。

また、紫外線によるダメージで表皮のターンオーバー(生まれ変わり)が乱れ、うるおいを守るバリア機能が低下することでも、間接的に乾燥が引き起こされます。

そのため、紫外線対策をして肌を守ることは、首のしわの予防や悪化防止には役立つといえます。

顔や首の筋トレをする

首のしわ対策として、顔や首の筋トレはおすすめできません。

首のしわ改善方法として、よく広頸筋の筋トレが紹介されることがありますが、むしろ、広頸筋の筋トレは、鍛えることで下に引っ張る力が強くなり、しわが目立ちやすくなる可能性が高くなってしまいます。

ただし、同じ筋トレでも顔や首でなく、例えば姿勢を改善するような全身のトレーニングの場合、顎の位置が上がって首の横じわの改善につながることが考えられます。

トレーニングをするなら、体全体を意識して行うとよいでしょう。

マッサージ・ストレッチをする

首のしわ対策として、マッサージもストレッチもあまりおすすめできません。

マッサージは、血行を促進させるメリットはありますが、肌を強くこすってしまうことで、摩擦でしわが悪化したり、くすみなどの色素沈着につながったりするリスクがあります。

もし、行う場合はオイルやクリームなどを使ってすべりをよくしたうえで、やさしく力を入れずにマッサージしてください。

ストレッチも同様に血行促進は期待できますが、方法によって縦スジを目立たせてしまう可能性があります。

枕の高さを変える

首のしわ対策として、枕の高さを変えるのは有効です。

高すぎる枕を使っていると、あおむけになった時に頭が持ち上がったような姿勢になり、首にしわが寄った状態になってしまいます。

その状態が睡眠中、何時間も続くと、首に横じわが刻まれてしまうのです。

枕の専門店などでチェックしてもらい、自分に合った高さの枕を使うことで、首の横じわの予防と悪化防止に努めましょう。

美容医療で治療する

首のしわ対策として、美容医療で治療することも有効です。

セルフケアは必要であるものの、改善できる首のしわの種類は限定されていることがわかりました。

またセルフケアは日々の積み重ねが必要で、さらにハッキリとした効果は感じにくいかもしれません。

短期間でハッキリとした効果が欲しい、または自力では対処が難しい皮膚の奥にアプローチが必要であれば、美容医療を選択肢に入れてみましょう。

美容医療で受けられる首のしわ改善治療

首のしわの改善が期待できる治療の選択肢は以下の通りです。

※国内未承認治療を含みますが、それらを推奨するものではありません

  • ヒアルロン酸などの注入治療
  • 照射治療 (フラクショナルレーザー、HIFU、RF機器など)
  • 皮膚再生治療 (スキンニードリング)
  • 外科による手術

ヒアルロン酸などの注入治療

首のしわは長らく「ネックリフト」と呼ばれる外科手術が治療のメインでした。

しかし近年、首のしわに適したヒアルロン酸製材が登場したことで、ヒアルロン酸注入治療によるアプローチも可能となりました。肌質改善も期待できるため、注目されています。

しわへのアプローチのほかに、皮膚のハリ・弾力感の向上や、しわが気になる部分以外の肌もなめらかに整えたりする効果も魅力です。

針を使用するため多少の内出血はあるものの、ダウンタイムが少ないことも選択されやすい理由の1つといえます。

ヒアルロン酸注入治療 は、製材の「硬さ」や「成分の種類」などの違いでタイプが分かれており、使い方も治療のサイクルも異なることを知っておきましょう。

照射治療(フラクショナルレーザー、HIFU、RF機器など)

首のしわの治療方法で、照射治療が選択されることもあります。

照射治療は、機器を使ってレーザーや超音波、高周波などを肌に照射することで、肌質改善や、肌の引き締めに用いられています。ダウンタイムがほぼないため、人気が高い治療法です。

縦じわは、加齢による肌の弾力の低下や水分不足などが原因で生じることから、肌に刺激を与えて引き締め、コラーゲンの産生を促す効果のある照射治療が選ばれることもあります。

どの機器が適しているかは、肌の状態やしわの位置などによって異なるため、医師と相談してください。

甲状腺の真上には、HIFU など照射できない施術もあるので、注意が必要です。

切開治療(ネックリフト)

切開治療(外科手術)は従来、首のしわの治療のベースになっていた方法です。

耳の後ろ側や襟足といった目立ちにくい部分を切開し、広頸筋を引っ張りあげてリフトアップさせ、余った皮膚を切除する治療法で、現在でもたるみが進んでいるケースでは、切開治療を優先して行われています。

手術のため、ダウンタイムが長くなりますが、効果が長期間持続するのが特徴です。

首のしわを改善するならまずは医師に相談してみて

首のしわはセルフケアだけでは改善が難しく、さらにマスクやメイクでごまかしづらい部位でもあるため、しわや縦スジが気になる場合は、美容医療 の力を借りるのがおすすめです。

ただし、治療の選択肢が多いので、自分で決めず、カウンセリングで相談し、治療法の提案を受けるのがよいでしょう。

複数のクリニックでカウンセリングを受けて、話しやすく、必要な治療と不要な治療をしっかり判断してくれるような相性の良い医師を探して、悩みの改善を目指しましょう。

監修・取材協力

湘南美容グループ 西川 礼華 先生

湘南美容グループ 皮膚科全体統括 西川 礼華 先生

2013年横浜市立大学医学部医学科卒業。2015年国立病院機構東京医療センター臨床研修修了後、湘南美容クリニック入職。
2017年湘南美容クリニック 皮膚科業績責任者を務め、2018年より湘南美容クリニック 皮膚科全体統括として従事する。

湘南美容クリニック 新宿本院

住所:〒163-1324 東京都新宿区西新宿6丁目5番1号 新宿アイランドタワー24F

前の記事へ
次の記事へ