目元は見た目年齢を大きく左右させるパーツの一つです。特に目頭の下から耳の方に斜めに「ゴルゴ線(ゴルゴライン)」が生じると、一気に老けた印象に。インターネットなどでは原因や対策についてさまざまな情報がありますが、一部誤解もあるという衝撃の事実が…!ここでは医師の監修のもと、ゴルゴ線の本当の原因や正しいセルフケアなどの対策について解説します。

監修・取材協力:岩城 佳津美 先生(いわきクリニックIC 院長)

ゴルゴ線(ゴルゴライン)とは?

目頭の下から頬にかけて斜めに伸びるラインを「ゴルゴ線(ゴルゴライン)」と呼びます。たるみじわの一つで、医学的用語ではなく、マンガの主人公にちなんだ名称です。(1)

まず「たるみじわ」とは文字通り、肌のたるみ(下垂)によって生じますが、皮膚に刻み込まれる一般的なしわとは異なります。肌内部の形状が崩れた結果、影ができ、しわのように見える境界線・溝です。ゴルゴ線以外の代表的なたるみじわとして、ほうれい線マリオネットラインが挙げられます。(2),(3)

ゴルゴ線は加齢にともなって生じることが多いものの、顔の皮下脂肪が少ない(つきにくい)人や、もともと上顎骨が小さいと20~30代で目立つことがあります。

ゴルゴ線(ゴルゴライン)ができる原因

肌のたるみ

先に説明した通り、たるみじわであるゴルゴ線は「肌のたるみ」が根本的な原因です。私たちの顔は骨・筋肉・皮下脂肪(皮下組織)・真皮(皮膚)・表皮(皮膚)の5つの層から成り立っており、たるみは下図のように層の変化の影響があるといわれています。(2) 詳しく説明しましょう。

※イメージ
参考文献(2)を参考に作成

1.骨量が減り、骨が縮む

加齢によって骨量が減り、たるみを引き起こすイメージ

※イメージ
参考文献(1)を参考に作成

「顔の土台」として筋肉や皮下脂肪・皮膚(真皮・表皮)を骨が支えています。加齢によって骨が衰えると、各層を十分に支えられず、重力によって垂れ下がり、たるみを引き起こすのです。眼球が収まっているくぼみ・眼窩(がんか)のまわりは広がり、頬骨や上顎の骨はへこみ、痩せこけます。ゴルゴ線はこのの変化の影響が大きいといわれています。(1)

2.皮下脂肪の量の減少・移動

加齢が進むと皮下脂肪の量が減少して、移動するイメージ

※イメージ
参考文献(1)を参考に作成

額・こめかみ・目の下・頬は皮下脂肪が元の位置から下に移動(下垂)しやすい部位です。ゴルゴ線は、特に頬の皮下脂肪の移動・減少によって溝が深くなってしまいます。(2)

3.支持靭帯(リガメント)の衰え・ゆるみ

支持靭帯(リガメント)の衰え・ゆるみにより、溝が生じるイメージ

※イメージ
参考文献(1)を参考に作成

顔の皮膚や表情筋と骨をつなぎ、支える「支持靭帯(リガメント)」。ゴルゴ線は眼窩のまわりが広がることで靭帯の位置が下がり、さらに上顎の骨がへこむことで靭帯から上の層が奥に引き込まれ、溝が生じてしまいます。(1),(2)

4.表情筋の衰え

表情筋の衰えに悩む女性

筋肉の減少や衰えで皮下脂肪や皮膚を支えられず、たるみにつながることもあります。加齢はもちろん、マスク生活で表情をつくることが減ると筋肉が衰えてしまうので注意しましょう。(2)

肌のハリや弾力性の低下

若いときの皮膚と加齢が進んだ時の皮膚のイメージ

※イメージ
参考文献(2)を参考に作成

ゴルゴ線が生じる直接的な原因ではありませんが、加齢や長年蓄積された紫外線の「光老化」による真皮(皮膚)の変化がゴルゴ線をさらに目立たせてしまいます。肌のハリ・弾力性を持たせているコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸が失われ、これらを産生する線維芽細胞も機能低下や損傷し、肌のハリがなくなってしまうためです。(2)

医師に聞く、誤解と真実。ゴルゴ線(ゴルゴライン)に有効なセルフケアとは?

スキンケア・紫外線対策

ゴルゴ線(ゴルゴライン)の対策としてのスキンケア化粧品

ゴルゴ線は肌の奥、主に骨や皮下脂肪の影響を受けて生じるため、残念ながらスキンケアで改善は難しいといえます。

とはいえ、ゴルゴ線を目立たせる原因となる、肌のハリや弾力低下を防ぐためにはスキンケアや紫外線対策は有効といえます。

化粧水や乳液などの基礎化粧品でのていねいな保湿はもちろん、光老化を招く紫外線対策も心がけてください。化粧品を選ぶ際は、以下の成分に注目してみると良いでしょう。

レチノール

ビタミンAの一種で、皮膚のターンオーバー(生まれ変わり)を促進させます。(4) また真皮に直接アプローチして、コラーゲンやヒアルロン酸産生を促し、肌をふっくらさせる働きもあります。さらに皮膚に栄養を届きやすくすることも期待できます。(5)

・ヒト幹細胞培養上清液

線維芽細胞を活性化させ、肌のハリ・弾力性を持たせるコラーゲン産生を促すと報告されています。(6)

表情筋のストレッチ・マッサージ

ゴルゴ線(ゴルゴライン)の対策として表情筋のストレッチ・マッサージをしていた女性

たるみじわであるゴルゴ線に対して、表情筋トレーニングやマッサージはおすすめできません。表情筋は、毎日会話や食事で動かす程度で十分で、鍛えると逆効果になることもあります。表情筋を鍛えようと、くり返し皮膚を伸縮させるので、しわを刻み込みやすく、加速させてしまう危険があるのです。(1)

また、むくみ対策などでマッサージを習慣にしている人は多いかと思います。しかし、マッサージは肌をこするため、摩擦を起こしやすく、肝斑などの黒ずみのリスクにもなってしまいます。(3) なるべく控えましょう。

生活習慣の見直し(タバコ、姿勢、食事・ダイエット)

タバコや姿勢、急激なダイエットなど生活習慣の見直し

直接的な改善にはつながりませんが、ゴルゴ線が生じないよう、肌の健康を保つ上で生活習慣は大切です。

具体的には以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

・タバコ

長期間にわたる喫煙は、しわやたるみなどの皮膚の老化に影響を及ぼします。ある調査では、非喫煙者と喫煙者を比べると喫煙者はしわのある人が多いという報告があります。(2),(3)

・姿勢

顔の皮下脂肪が重力で垂れ下がりやすくなるのは事実です。例えば、スマートフォンを見るときの姿勢、顔の向きが挙げられます。下を向いて画面を見る習慣が続くと、肌は重力の影響を受けやすく、たるみにつながりかねません。(7)

スマートフォンなどの画面を見る位置は上げる意識をしてみましょう。

・食事はバランスよく摂り、急激なダイエットをしない

特定の食材や栄養素だけを極端に摂ったり、食事量を減らしてしまうと、栄養バランスが悪くなってしまいます。なるべくいろいろな品目を食べるようにしましょう。

また年齢を重ねた後に極端なダイエットをして皮下脂肪の量が減ってしまうと、たるみにつながってしまうので注意が必要です。

ゴルゴ線(ゴルゴライン)を改善したいなら!美容医療という選択肢を

ゴルゴ線(ゴルゴライン)を美容医療で治療するため、説明を受ける場面

ゴルゴ線は、加齢とともに進行する骨量の減少・骨の縮みや靭帯の衰えによって引き起こされるので、残念ながらセルフケアでの改善は見込めません。どうにかしようと誤ったケアを行ってしまうと、悪化を招くリスクもあります。

ゴルゴ線を改善させたいなら、美容皮膚科・外科の治療を視野に入れましょう。施術はさまざまあり、顔立ちや肌の状態、希望に応じて提案・アドバイスをしてもらえるはずです。ここではゴルゴ線の代表的な施術をご紹介します。

※国内未承認治療を含みますが、それらを推奨するものではありません

代表的な治療法①/ヒアルロン酸注入治療

ヒアルロン酸注入治療のイメージ

ゴルゴ線治療においてポピュラーな施術の一つです。加齢によって皮下脂肪が垂れ下がり、ボリュームが減ってしまった頬の骨の上に医療用のヒアルロン酸を注入し、ボリュームを補います。(1),(2)

顔の凹凸を少なくし、フェイスラインを形成する目的でも行われます。(1),(2)

ヒアルロン酸注射のみで改善することもありますが、肌の状態に応じて、他の施術を組み合わせた治療が多い傾向です。

代表的な治療法②/高周波・超音波の照射治療

高周波・超音波の照射治療イメージ

具体的な施術としてサーマクールや高密度焦点式超音波治療(HIFU・ハイフ)が挙げられます。いずれも高周波や超音波を照射し、熱エネルギーの刺激により、皮膚の引き締めやコラーゲンやエラスチン産生の活性化を狙う施術です。ゴルゴ線においては、たるみの引き締めにも効果的です。(8),(9)

代表的な治療法③/スレッドリフト(糸リフト)

スレッドリフト(糸リフト)のイメージ

スレッドリフト(糸リフト)とは、特殊な糸(時間が経てば溶解する)を用いて垂れ下がった皮下脂肪を元の位置に戻し、下がってこないように留める施術です。(10)

ゴルゴ線を改善したい場合は、まず医師に相談を

ゴルゴ線(ゴルゴライン)を美容医療で治療するため、説明を受ける場面

ゴルゴ線が気になり始めたとき、多くの人がまずはセルフケアでの対処を考えてしまうかと思います。しかし、ゴルゴ線の根本的な原因である「肌の奥」を改善するのは難しいものです。

ご自身のゴルゴ線を引き起こしている原因・治療法を正しく知るために、まず医師に相談することから始めてみましょう。早期治療ができれば、費用も抑えることができます。

クリニックを探す際は、医師自らがカウンセリングを行っているかをチェックポイントにし、検討することをおすすめします。

参考文献
(1) 古山 登隆:解剖から学ぶヒアルロン酸注入療法:メディカルレビュー社.2020
(2) 川田 暁:美容皮膚科ガイドブック第2版:中外医学社.2019
(3) 安田 利顕,漆畑 修:改定10版 美容のヒフ科学:南山堂.2021
(4) 松永 由紀子:美容皮膚医学BEAUTY.2023.6(2):9-16
(5) 櫻井 直樹:正しい知識がわかる 美肌辞典:高橋書店.2021
(6) 市橋 正光,長濱 宏治:日本香粧品学会誌.2020.44(1):30-35
(7) Francesco Carini et, al:Acta Biomed.2017 Apr 28;88(1):11-16
(8) 前多 一彦:美容皮膚医学BEAUTY.2021.4(6):16-17
(9) 伊藤 史子:美容皮膚医学BEAUTY.2023.6(3):74-82
(10) 鈴木 芳郎:Bella Pelle.2017.2(4);24-29

監修・取材協力

いわきクリニックIC 院長 岩城 佳津美 先生

いわきクリニックIC 院長
岩城 佳津美 先生

ヒアルロン酸注入(フィラー注入)のスペシャリスト。アラガン・エステティックス注入セミナー・注入技術指導講師。2003年京都府長岡京市にて(旧)いわきクリニック形成外科・皮フ科を開業する。

レーザー治療やヒアルロン酸(フィラー)注入に関して多くの学会発表・講演・医学書や論文の執筆、注入技術指導を行う。

いわきクリニックIC

住所:京都府長岡京市長岡2-2-2

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