見た目年齢を一気に上げてしまう「マリオネットライン」。近年のマスク生活でマリオネットラインに悩む人は増加傾向です。ここでは医師の監修の元、マリオネットラインが現れてしまう原因からセルフケアなどの対策について、詳しく解説します。

監修・取材協力:岩城 佳津美 先生(いわきクリニックIC 院長)

マリオネットラインとは?

口角からあごに向かって下へ伸びるラインを「マリオネットライン」と呼びます。医学的用語ではなく、マリオネット人形の口元と似ていることから呼ばれている名称です。

鼻の横から上唇にハの字に現れる「ほうれい線」や、目頭から下から頬にかけて斜めに伸びる「ゴルゴ線(ゴルゴライン)」と同じ、たるみじわの一つです。

「たるみじわ」とは文字通り、肌のたるみ(下垂)によって生じますが、皮膚に刻み込まれる一般的なしわとは根本的な原因が異なります。肌内部の構造が崩れ、上から皮膚が垂れ下がった結果、影ができ、しわのように見える境界線・溝です。

マリオネットラインは、顔の皮下脂肪が多い人に現れやすく、年齢を重ねるにつれて顕著になっていく傾向があります。さらに近年のマスク生活で、マスクを外した時のギャップを気にする人が増え、マリオネットラインに悩む人が増加しています。

マリオネットラインができる原因

肌のたるみ

先ほど触れた通り、マリオネットラインは「肌のたるみ」が根本的な原因です。私たちの顔は骨・筋肉・皮下脂肪(皮下組織)・真皮(皮膚)・表皮(皮膚)の5つの層から成り立っており、たるみは以下の層の変化の影響があるといわれています。

1. 骨量が減り、骨が縮む

「顔の土台」として筋肉や皮下脂肪・皮膚(真皮・表皮)を骨が支えています。加齢によって骨が衰えると、各層を十分に支えられず、重力によって垂れ下がり、たるみを引き起こすのです。

2. 皮下脂肪の量の減少・移動

額・こめかみ・目の下・頬は皮下脂肪が元の位置から下に移動(下垂)しやすい部位です。マリオネットラインはこれらの部位から下に移動した皮下脂肪が口元で塞き止められ、生じてしまいます。

3. 支持靭帯(リガメント)の衰え・ゆるみ

顔の皮膚や表情筋と骨をつなぎ、支える「支持靭帯(リガメント)」。この支持靭帯もマリオネットラインに大きな影響を与えています。垂れ下がってくる皮下脂肪を支持靭帯がハンモックのように塞き止めることで、溝が深くなってしまうのです。

4. 表情筋の衰え

筋肉の衰えで皮下脂肪や皮膚を支えられず、たるみにつながることもあります。また、年齢を重ねると上下にひっぱる筋肉のバランスが崩れてしまい、肌が下垂したように見え、マリオネットラインを目立たせてしまいます。加齢はもちろん、マスク生活で口角を使うことが減ると筋肉が衰えてしまう可能性があるので注意しましょう。

肌のハリや弾力性の低下

直接的な原因ではありませんが、真皮(皮膚)の変化がマリオネットラインをさらに目立たせてしまいます。

加齢や長年蓄積された紫外線の「光老化」による影響で、肌のハリ・弾力性を持たせているコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸が失われてしまいます。さらに、これらを産生する線維芽細胞も機能低下や損傷してしまい、肌のハリがなくなってしまうのです。

マリオネットラインが消えた人はどんな対策をしている?医師が教える、セルフケアの誤解と真実

インターネットなど各メディアでマリオネットラインのさまざまな対処法が取り上げられていますが、どれも有効なのでしょうか。岩城先生に伺ったところ、医学的な観点では一部誤解があるという驚きの事実が判明しました。理由とともに解説します。

スキンケア・紫外線対策

マリオネットラインは肌の奥…骨や皮下脂肪、支持靭帯の影響を受けて生じるため、皮膚で効果を発揮するスキンケアで根本的な改善は難しいでしょう。

しかし、マリオネットラインを目立たせる要因となる、肌のハリや弾力低下防止としてスキンケアや紫外線対策は有効といえます。

化粧水や乳液などでていねいに保湿、日焼け止めなどの紫外線対策を入念に行いましょう。化粧品を選ぶ際は、以下の成分をチェックしてみてください。

  • レチノール
    ビタミンAの一種で、皮膚のターンオーバー(生まれ変わり)を促進させます。また真皮に直接アプローチして、コラーゲンやヒアルロン酸産生を促し、肌をふっくらさせる働きもあります。さらに皮膚に栄養を届きやすくすることも期待できます。
  • ヒト幹細胞培養上清液
    線維芽細胞を活性化させ、肌のハリ・弾力性を持たせるコラーゲン産生を促すと報告されています。

表情筋のストレッチ・マッサージ

マリオネットラインなどのたるみじわに、表情筋トレーニングやマッサージはおすすめできません。表情筋は、毎日会話や食事で動かす程度で十分で、鍛えると逆効果になることもあります。表情筋を鍛えようと、くり返し皮膚を伸縮させるので、しわを刻み込みやすく、加速させてしまう危険があるのです。

また、むくみ対策などでマッサージを習慣にしている人は多いかと思います。しかし、マッサージは肌をこする、摩擦を起こしやすく、肝斑などの黒ずみのリスクにもなってしまいます。なるべく控えましょう。

生活習慣の見直し(タバコ、姿勢、食事・ダイエット)

マリオネットラインの直接的な改善にはつながりませんが、肌の健康を保つ上で生活習慣は大切です。
具体的には以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

・タバコ

長期間にわたる喫煙は、しわやたるみなどの皮膚の老化に影響を及ぼします。ある調査では、非喫煙者と喫煙者を比べると喫煙者はしわのある人が多いという報告があります。

・姿勢

顔の皮下脂肪が重力で垂れ下がりやすくなるのは事実です。例えば、スマートフォンを見るときの姿勢、顔の向きが挙げられます。下を向いて画面を見る習慣が続くと、肌は重力の影響を受けやすく、たるみにつながりかねません。

スマートフォンなどの画面を見る位置は上げる意識をしてみましょう。

・食事はバランスよく食べ、急激なダイエットをしない

特定の食材や栄養素だけを極端に摂ったり、食事量を減らしてしまうと、栄養バランスが悪くなってしまいます。なるべくいろいろな品目を食べるようにしましょう。

また年齢を重ねた後に極端なダイエットをして皮下脂肪の量が減ってしまうと、たるみにつながってしまうので注意が必要です。

マリオネットラインの改善には、美容医療を選択肢に!

マリオネットラインは、加齢とともに進行する骨量の減少・骨の縮みや靭帯の衰えによって現れるため、自分自身の努力、セルフケアでは対処が難しいものです。また誤ったケアをしてしまうと、悪化を招くリスクもあるので、注意が必要です。

マリオネットラインを消す、目立たなくさせるには美容皮膚科・外科の治療を視野に入れましょう。ここでは代表的な治療法をご紹介します。マリオネットラインは、重力で下に垂れ下がった皮下脂肪を減らすことも、ボリュームロスした部位を補うことも必要であるため、複数の施術を組み合わせた「足し算・引き算の治療」を検討されることが多くあります。

※国内未承認治療を含みます

代表的な治療法①/ヒアルロン酸注入治療

ヒアルロン酸注射はマリオネットラインをはじめとした、たるみじわの治療に用いられるポピュラーな施術です。加齢によって皮下脂肪が垂れ下がり、ボリュームが減ってしまった頬の骨の上にヒアルロン酸を注入し、ボリュームを補います。その後、出来てしまった溝にも注入し、目立たなくさせます。

顔の凹凸を少なくしたり、フェイスラインを形成する目的でも選択されます。

代表的な治療法②/高周波・超音波の照射治療

熱エネルギーの刺激による皮膚の引き締めやコラーゲンやエラスチン産生の活性化を狙うため、サーマクールや高密度焦点式超音波治療(HIFU・ハイフ)が挙げられます。マリオネットラインにおいては、たるみの引き締めに用いられます。

代表的な治療法③/糸・針による治療

スレッドリフトは、皮下組織に特殊な糸(時間が経てば溶解する)を通して固定し、マリオネットラインの肌のたるみを引き上げます。施術を受けてから通常の生活に戻るまでの期間・ダウンタイムが短いことが利点の一つです。

代表的な治療法④/皮下脂肪を減らす部分痩せ治療

具体的な施術として、皮膚の下に少量の薬剤を注入し、内部の脂肪を分解させる脂肪溶解注射が挙げられます。顔などの小さな部位に効果を発揮しやすい治療です。マリオネットラインは他の部位から下に移動してきた皮下脂肪が口元に塞き止められて生じるため、この皮下脂肪を減らすために用いられます。

マリオネットライン対策を始めるなら、まず医師に相談を

マリオネットラインが気になり始めたら、間違ったケアを避けるためにも美容皮膚・外科でカウンセリングを受けることから始めてみましょう。

早期に治療を開始すれば、進行を食い止めることはもちろん、費用も抑えられます。また治療法も顔立ちや肌の状態はもちろん、希望に応じて、提案・アドバイスをしてもらえるはずです。

信頼できる医師・クリニックを探す際のポイントは、治療はもちろんカウンセリングも医師が行っているかをチェックすることをおすすめします。

 

参考文献

    • 古山 登隆:解剖から学ぶヒアルロン酸注入療法.メディカルレビュー社,2020
    • 川田 暁:美容皮膚科ガイドブック第2版.中外医学社,2019
    • 安田 利顕・漆畑修:美容のヒフ科学改訂10版.南山堂,2021
    • 日本循環器学会:禁煙ガイドライン(2010年改訂版)

    監修・取材協力

    いわきクリニックIC 院長 岩城 佳津美 先生

    いわきクリニックIC 院長 岩城 佳津美 先生

    ヒアルロン酸注入(フィラー注入)のスペシャリスト。アラガン・エステティックス注入セミナー・注入技術指導講師。2003年京都府長岡京市にて(旧)いわきクリニック形成外科・皮フ科を開業する。

    レーザー治療やヒアルロン酸(フィラー)注入に関して多くの学会発表・講演・医学書や論文の執筆、注入技術指導を行う。

    いわきクリニックIC

    住所:〒617-0823 京都府長岡京市長岡2-2-2

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