「ヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)はほうれい線に使える?」「ヒアルロン酸注射の料金やデメリットが知りたい」というように、ヒアルロン酸注射に興味を持っている方は少なくないようです。

ヒアルロン酸注射は、メスなどで切開することなく、しわやたるみ治療が行えます。

しかし、治療によるデメリットや効果について不安があり、クリニックへ相談するのをためらっている方もいるでしょう。

そこで今回は、事前に知っておきたいヒアルロン酸注射の適用部位や費用感、リスクなどについて、城本クリニックの小川 先生に伺いました。

監修・取材協力: 小川 英朗 先生(城本クリニック 福岡院 院長)

ヒアルロン酸とは 

ヒアルロン酸は、皮膚(肌)、腱、筋肉、軟骨、脳、血管など、もともと私たちの体内に広く存在する物質です。

皮膚では、主に皮膚の深くにある真皮層に存在し、皮膚の弾力性や潤いを保つ成分として欠かせません。

しかし、体内のヒアルロン酸は20代をピークに、加齢とともに減少していきます。ヒアルロン酸が減った肌は、十分な水分や弾力を保持できず、ハリがなくなり、しわやたるみが発生する原因のひとつとなります。

加齢による体内のヒアルロン酸量の変化を表したグラフ

ヒアルロン酸注射とは

ヒアルロン酸注射は美容医療だけでなく関節や目の治療にも使われている

ヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)とは、関節の治療や目の治療をはじめ、肌や肌内部の組織の治療にも使われている施術です。

具体的には、しわたるみの改善、加齢による顔のボリューム減少の改善、フェイスラインやあごの形成などに役立ちます。

最近では肌質を改善する働きを持つヒアルロン酸も開発され、肌の乾燥、乾燥が原因の小じわを改善するために用いられることもあります。

ヒアルロン酸注射の概要 (1),(2) 

施術時間各部位5~10分程度(1か所あたり)
麻酔希望によりテープ麻酔やクリーム麻酔を使用
(場合によってはブロック麻酔を併用)
ダウンタイム※1数日~1週間程度
起こりやすいリスク※2内出血、腫れ、むくみ、赤み、かゆみ、痛み、チンダル現象※3 、不自然な凹凸など
傷跡ほとんど目立たない
持続性約6か月~2年程度 (3),(4)
(注入部位や回数などによる)
メイク施術当日から可能だが、
感染予防のため3時間程度経過してから、
もしくは翌朝以降を推奨
入浴・洗顔施術当日から洗顔・洗髪・入浴が可能
顔のマッサージ・美顔器の使用なるべく控えたほうがいいでしょう
※変形を招いたり、早期吸収が促されたりする可能性があります。うつぶせ寝にも注意
妊娠中・授乳中の施術安全性が確立されていないため、避けること

 

※1:ダウンタイム:施術後から回復までの期間のことで、施術前の生活を取り戻せるまでの期間
※2:注入直後~注入後4週間以内に起こりやすいリスク
※3:注入した皮下のヒアルロン酸が透けて皮膚が青みを帯びているように見えるもの

ヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)のメリット・デメリット

ヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)の主なメリットとデメリットをまとめてご紹介します。

メリット

ヒアルロン酸注射の施術時間は1か所につき5~10分前後
  • さまざまなしわやたるみに対応可能
  • エイジングケアだけでなく、魅力的なパーツや輪郭の形成が可能
  • 施術時間は部位にもよるが、1か所につき5~10分前後と切開を伴う手術と比べ短時間で治療できる
  • 施術後のダウンタイムも数日~1週間程度と比較的短い
  • 施術後すぐから効果を感じやすい
  • 使用するヒアルロン酸注射の種類によっては肌質改善も可能

デメリット(1),(4)

  • 効果持続期間が永久ではない(製材や注入量に応じて約6か月~2年ほど)
  • 注入部位や注入量によっては思うような効果を得られないことも
  • ごく稀だが、血流障害や重篤な合併症などの副作用がある

ヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)の注入部位

ヒアルロン酸注射でアプローチできるお悩み

ヒアルロン酸注射でアプローチできるお悩み例

お悩みの例(1),(3) 

ヒアルロン酸注射には、硬さや材質の違う種類がさまざまあり、使用する部位やお悩みに合わせて、適した種類を使い分けます。

まずはクリニックを受診し、気になっているお悩みを相談してみましょう。

表情じわにはボツリヌス注射も選択肢に

ヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)は、目元の小じわやほうれい線の改善には有効なことが多いものの、しわの種類によってはボツリヌス注射(ボツリヌス治療)が適しているケースもあります。

表情じわはヒアルロン酸注射よりボツリヌス注射が適している

例えば、眉間のしわ目尻のしわなどは筋肉の収縮によって生じるので、筋肉の緊張を緩める作用のあるボツリヌス注射が向いているとされます。

また、ボツリヌス注射とヒアルロン酸注射を併用するコンビネーション治療※4によって、よりお悩みを解決できる場合もあるため、カウンセリングの際、医師に判断してもらうとよいでしょう。

※4:併用治療の有効性・安全性、またどれくらい期間を空けるか等は検証されておりません

ヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)に関する気になる疑問を医師が解説

ヒアルロン酸注射に関して医師に相談している女性

ヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)に関する疑問について、小川先生に教えていただきました。

ヒアルロン酸注射の料金について 

ヒアルロン酸注射の料金は、1本(1cc)あたり7万~15万円が一般的です。クリニックによって差があります。

クリニックによって自由に価格を設定できるため、同じ製材を使っていても、価格が異なります。したがって、一概に価格が高いからいい、安いから悪いと判断するのは難しいといえるでしょう。

また、価格はクリニック選びのポイントのひとつになりますが、価格だけで選ぶことはせずに、症例を見たうえで、複数のクリニックでカウンセリングを受けるのが理想です。

症例写真のNG例

そのうえで、納得できたクリニックにて治療を受けることをおすすめします。

ヒアルロン酸注射を安いクリニックで受ける前に注意したいこと

ヒアルロン酸注射の価格には、使っている製材が「承認品」か「未承認品」なのかの違いが反映されていることもあります。

美容医療で使用する薬剤・機器には「承認品」と「未承認品」がある

医薬品や医療機器は、国などの審査を受けて承認される必要があります。日本では、薬事承認しているものを「承認品」、承認を受けていないものを「未承認品」と呼んでいます。

保険診療の場合は原則、承認品しか使用が認められていません。しかし、美容医療などの自由診療の場合は、医師の裁量で未承認品を使うことも可能です。

未承認品のなかには、効果や安全性が不確かなものもあるという事情をふまえて、治療を受ける際には、使用する薬剤・機器に対して安全性や効果を含め、正しい理解と選択をしていきましょう。

施術の流れについて

ヒアルロン酸注射の場合、メイクを落とした状態でカウンセリングを行い、治療が可能と診断できたら施術を行います。

カウンセリングはヒアルロン酸注射を希望する場合メイクを落とす
  1. 針の痛みが心配な場合は任意で麻酔をする
  2. ヒアルロン酸を少しずつ注入する
  3. 仕上がりを確認し、処置完了

処置完了後は、問題がなければ帰宅していただけます。

なお、施術後すぐにメイクをすると、処置部位の注射器の針穴から菌やウイルスが入り、感染症を起こす可能性があります。当院では、少なくとも施術後3時間くらい経過してからメイクすることをおすすめしています。

場合によっては翌朝までメイクを避けたほうがよいケースもあるので、担当の医師に確認しましょう。

ヒアルロン酸注射のリスクについて  

ヒアルロン酸注射を行った場合、数日間はふくらみや赤み、内出血などが気になるかもしれません。また、ごく稀に重篤な副作用が起こることもあります。

ヒアルロン酸注射の施術後から4週間は内出血、腫れ、むくみ、赤み、かゆみ、痛み、チンダル現象※3、不自然な凹凸などの症状が起こるがあります。これらはよくある術後の症状なので、数日間(場合によっては1~2週間)時間の経過とともに改善が見られれば、普段通り過ごしてよいでしょう。

もしも腫れや赤みが日に日に悪化していたり、施術箇所に白いニキビができたりするといった兆候があれば、治療を受けたクリニックに連絡してください。

なお、稀に注入後、時間が経ってから、感染症やアレルギー症状、肉芽腫、血腫、感染、注入部位の着色または退色、神経圧迫、塞栓、膿疹形成、過敏症などが起きることがあります。また脳梗塞、失明、皮膚の循環障害や壊死などの重篤な有害事象が起きることがあります。(1), (2)

施術前は不安に感じることは医師とよく相談し、施術後に少しでも違和感を感じたら、早めにクリニックへ連絡しましょう。

施術後しばらくは、注入をした部位の状態を日々チェックしておくことも大切です。

※3:注入した皮下のヒアルロン酸が透けて皮膚が青みを帯びているように見えるもの

術後の経過について

ヒアルロン酸注射の施術後、約1週間でヒアルロン酸が定着します。※5それまでは施術部位をさわり過ぎないようにしておきましょう。

注入後はふくらみなどが気になり、施術部位をついさわってしまいがちですが、定着するまでにさわり過ぎると、せっかく注入したヒアルロン酸がずれてしまう可能性もあります。

※5:監修医師の臨床経験に基づく

治療効果について

ヒアルロン酸注射は施術後から効果を実感できることが多いでしょう。施術後、鏡を見た際に施術した部位の変化を実感できるはずです。

2~3日は注入部分がふくらみ気味になる場合もあり、「やり過ぎた?」と不安になるかもしれません。ですが、1週間ほどで徐々に自然な仕上がりに落ち着きます。

少し様子を見て、それでも仕上がりが気になる場合はあらためてクリニックに連絡してみましょう。

持続期間について 

ヒアルロン酸注射治療の効果を実感する期間は、注入部位や回数などによりますが、約6か月~2年ほどです。(1),(3),(4),(5)その後は少しずつ効果を実感しにくくなるといわれています。

ヒアルロン酸はもともと体内にある物質です。注入されたヒアルロン酸が徐々に体内に吸収されていくため、時間の経過とともに効果を実感しにくくなるのです。

なお、体質や生活習慣によっては、ヒアルロン酸が通常よりも早く吸収されることがあります。また、ヒアルロン酸を溶解させる薬剤を注入すれば、すぐに溶かすこともできます。※6

※6:本邦未承認品であり、使用を推奨するものではありません。

痛みについて

ヒアルロン酸注射は、基本的に麻酔を使うため、痛みが苦手な方でも受けやすい施術といえます。

施術では非常に細い針を用いるので、痛みは少ないとされていますが、テープやクリームの麻酔、ブロック麻酔を併用することで痛みを軽減、もしくはほぼ感じなくさせることができます。(1)

注射直後は軽い痛みを感じるかもしれませんが、ヒアルロン酸製材自体にも麻酔成分が含まれているため、徐々に痛みを感じなくなるのでご安心ください。

ヒアルロン酸注射による効果を長持ちさせるには?

効果を長持ちさせるために、注入箇所をさわり過ぎないように注意しましょう。

注入箇所を強く押したり、マッサージしたりするのもNGです。ヒアルロン酸が長持ちしないばかりか、最悪の場合、注入した部位からずれてしまうこともあります。

注入後しばらくは、気になってついさわりたくなったり、軽い痛みや腫れがあると心配になったりするかもしれませんが、できるだけ我慢しましょう。

不自然なふくらみについて

ドクターとしっかり相談することが大切です。また、不安があるうちは治療を控えるのも重要な判断です。

カウンセリング時には、自分のなりたい顔をドクターに伝え、イメージを共有しておくことで、ヒアルロン酸注射で不自然なふくらみができるのを避けやすくなるでしょう。

また、インターネットなどで調べると、ヒアルロン酸注入による合併症の発症や、ヒアルロン酸の注入し過ぎでふくらみが強い顔になったことを揶揄する「ヒアルロン酸顔」のような表現もあり、ヒアルロン酸注射を受けることに不安を持つ方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、適切なトレーニングを受け、さらに有害事象発生時にも速やかに対応できる医師が行えば、ヒアルロン酸注射は安全に行える施術といえます。

最も気になっている部位から少しずつ治療を始めてみるのもひとつの手です。

参考文献

(1)古山 登隆:解剖から学ぶ ヒアルロン酸注入療法. メディカルレビュー社. 2020.
(2)大慈弥 裕之:ヒアルロン酸注入治療安全マニュアル. 克誠堂出版. 2018.
(3)古山 登隆,海野由利子,砂川恵子,青木和香恵:目もとの上手なエイジング―眼瞼下垂から非手術的美容医療,エイジング世代のメイクアップまで―.全日本病院出版会,2021.
(4)田中 志保:モダンメディア. 2021;67(10):421-426.
(5)美容皮膚医学BEAUTY Vol.6 No.1.医学出版,2023

監修・取材協力

城本クリニック 福岡院 小川 英朗 先生

城本クリニック 福岡院 院長 小川 英朗 先生

2008年、九州大学医学部医学科卒業。佐田厚生会佐田病院、九州大学病院にて研修、九州大学病院脳神経外科、九州医療センター脳神経外科に勤務。2012年大手美容外科を経て、2014年城本クリニックに入職。2019年2月より現職。脳外科で身につけた頭蓋頭頸部の広い解剖学知識を礎に日々研鑽を積み、受けた人全員が幸福になる美容医療を目指している。

日本美容外科学会専門医、ボトックス施注資格・ジュビダームビスタ®ハイラクロス施注資格・ジュビダームビスタ®バイクロス施注資格取得

城本クリニック 福岡院

住所:〒810-0001 福岡県福岡市中央区天神2-4-29 フェス天神2F

前の記事へ
次の記事へ