乾燥や小じわ、季節の変わり目の肌荒れなど、肌の悩みはつきません。「肌の潤い」は美肌の鍵でもあるため、保湿対策に余念がない人も多いものの、自己流の保湿対策では思うように肌が潤わないことも。そこでインフルエンサーの宮田 綾子 さんと一緒に、肌が潤いを保つメカニズムや効果的な保水対策など、内側から潤うぷるぷる肌の極意を美のプロである森川 先生に解説していただきました。

監修・取材協力:
森川 総一郎 先生(湘南美容皮フ科 渋谷公園通り院 院長 兼 若返り処置エキスパートドクター)
宮田 綾子 さん(インフルエンサー、SNSコンサルタント・セミナー講師)

自己流保湿の落とし穴!保湿と肌の潤いの関係

まずは普段行っている肌の保湿対策にどれくらい満足しているのか、20代以上の女性約400人にアンケート調査を実施しました。

今の保湿対策に満足していないのはなぜ?

アンケート調査によると、スペシャルケアや紫外線対策など自己流の保湿対策で十分に満足している方は約6%でした。

満足していない理由として「対策しても効果を感じられない(すぐに乾燥を感じてしまう)ため」が最も多く、次いで「対策に必要なアイテムに費用がかかるため」「いま行っている対策が正しいかわからないため」「対策に手間がかかるため」となっています。

今行っている顔の保湿対策に満足していない理由に関するアンケート結果

より効果を実感しやすい保湿対策があるとうれしいですよね。

美の発信者はどんなセルフケアをしている?日常の保湿対策

多くの方々がより満足度の高い保湿対策を行うには、どうすればよいのでしょうか。

InstagramなどのSNSで美容情報を発信している宮田 さんに日常どのような保湿対策をしているのか、伺いました。

Instagramで28万人ものフォロワーがいる宮田 綾子さん

宮田さん:朝のスキンケアはその日の予定によってまちまちなので、夜のルーティンについてお話ししますね。夜はまずお風呂でクレンジングをしてメイクを落とし、洗顔をします。お風呂から出た後はすぐ導入美容液を使って化粧品の浸透を高めてから、化粧水、美容液、乳液、そしてクリームの順に使い、肌をいたわっています。ほかにはサプリメントも飲んでいます。これだけやっているので、ある程度の効果は実感していますが、どれが効いているのかわからなくて、どんどんやることが増えていっている状態です(笑)。

森川先生:しっかりと対策されていますね。すばらしいです。日々のスキンケアは保湿対策の基本でもあり、潤いがあることは肌にとって、とても大切なことなんです。

知っておきたい、肌が潤うメカニズム

宮田さん:保湿対策が肌にとって大切だということはよく聞きます。ですが、肌に潤いがあるのとないのとでは、実際どのような違いがあるのでしょうか。

森川先生:肌には、コラーゲンやセラミドといった天然の保水成分がそもそも存在しています。(1) 肌の保水成分は、肌を美しく保つためになくてはならないものです。保水成分は毛穴の開き、小じわなど、肌の質感や弾力性、色調に影響を及ぼします。(2),(3)

肌が潤うメカニズムや、肌の乾燥による影響を解説する森川先生

宮田さん:やはり美しい肌を保つためには保湿が重要なのですね。

森川先生:肌の潤いは美容の面だけでなく、健康面からも重要です。潤いがないと、肌表面のバリア機能が低下してしまいます。すると、細菌やウイルスなどの異物やアレルゲンなどの刺激が肌に入り込みやすくなり、トラブルの原因になってしまうことがあります。(1) 保湿によって潤いのある肌になることは、肌の美しさとともにバリア機能も保ち、肌を守る役割も果たしています。

健康な皮膚と乾燥した皮膚

潤いのある肌って具体的にどんな状態?肌の構造を知ろう

宮田さん:普段行っているスキンケアで、保湿対策は十分なのでしょうか?

森川先生:日々のスキンケアはもちろん大切ですが、それだけでは十分といえないこともあります。肌は表皮、真皮、皮下脂肪という3つの層に大きく分かれています。最も表面にあるのが表皮で、肌の「キメ」「毛穴」「肌トラブル」「しわ」「シミ」「色ムラ」など、主に見た目の部分に関わっています。また、表皮の上には皮脂と汗がまじりあった皮脂膜があり、水分の蒸発を防いだり、ツヤを保ってくれたりする働きをしています。(1)

肌の構造

森川先生:表皮の下にある真皮には、主に肌の「ハリ」「ツヤ」といわれる柔軟性や水分量の保持に関わるコラーゲンやエラスチン、水分をたくわえるヒアルロン酸などの成分が存在しています。(1) これらの成分がたくさんあると、ハリやツヤのある肌になります。実はスキンケアで対処できるのは肌の表面までなのです。(4)

宮田さん:スキンケアだけでは、肌の真皮層のハリやツヤをケアするのが難しいのですね。

森川先生:そうなんです。真皮層のコラーゲンやエラスチンは加齢に加え、「光老化」とよばれる肌の衰えをもたらす紫外線の影響などを受けて減少します。(1) 減少した真皮層のコラーゲンやエラスチンを、化粧品によるスキンケアで補うことはできません。そのため、年齢を重ねたり、紫外線を浴びる機会が多かったりする方は真皮層の保水成分が不足してしまうことがあります。

潤いを実感できるポイントは「アクアポリン3」

森川先生:近年、コラーゲンやエラスチンと同じく天然の保水成分として、「アクアポリン3(AQP3)」という成分も注目されています。

宮田さん:初めて聞く名前です。どんな成分なのですか?

森川先生:AQPという名前は、ラテン語の「水を通す穴」に由来します。哺乳類には13種類のAQPが存在していて、腎臓における水の再吸収、肌の潤い、感覚器における情報伝達、唾液分泌、脂肪代謝など、さまざまな働きをすることがわかっています。(5) なかでもAQP3は表皮の基底膜周辺に存在し、水分のほかにグリセロールという保水力を高める脂質を運ぶ役割を果たしています。肌にAQP3が多く存在していると、潤ったハリやツヤのある肌になるといわれています。(5)

アクアポリンの組織図

宮田さん:大事な存在ですね。

森川先生:はい、大事です。AQP3を増加させることが、肌の潤いやハリ・ツヤの増加による肌の活性化にも役立つ可能性があり、近年注目が集まっているのです。(6) ただし、AQP3もまた加齢などの影響で徐々に減り、スキンケアでは対策することが難しいとわかっています。(7) 例えば高齢者の方や日光に当たる機会が多い方はAQP3が減ってしまい、乾燥肌になりやすいのです。(8) 潤いのある肌を保つには、コラーゲンやエラスチンに加えてAQP3を増加させるとともに、年齢や肌の状態によって有効な保湿対策をとることが重要といえます。

どうすれば内側から潤うぷるぷる肌が長続きする?

ここまで、肌の健康と美しさを維持するには潤い(保水力)が重要であること、そして肌の保水力には肌の奥の真皮層にあるコラーゲンやエラスチン、さらにはAQP3という成分が鍵を握っていることがわかりました。

しかし、真皮層の保水成分は加齢や紫外線による光老化などの影響で減少し、肌の潤いも減ってしまいます。肌の保水力を高める方法はないのでしょうか。

医療の力に頼ってみるのも手!

肌の保水力を補う方法について質問する宮田さん

森川先生:保水力の低下は、加齢による肌トラブルの一つと考えることもできます。残念ながら、セルフケアで保水力を高めることは難しいのですが、医療の力を使えば改善できることがあるんです。

宮田さん:そうなのですね。具体的にはどのような方法があるのですか?

森川先生:代表的なのは、ヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)です。ヒアルロン酸は、私たちの体内にもともと存在している成分の一つで、美容医療ではしわ、たるみの改善、加齢による顔のボリューム減少の改善、フェイスラインやあごの形成など、肌や肌内部の組織の治療に、一般医療では関節の治療や目の治療などに使われています。(9)

宮田さん:美容皮膚科では内服薬や軟膏を処方していただいたり、シミ治療を行ったりしたことはありますが、ヒアルロン酸注射はやったことがなかったです。

森川先生:肌質改善が期待できるヒアルロン酸もあり、肌の乾燥や乾燥が原因の小じわを改善するために用いられているんです。(10) 先ほどお話しした、肌の潤いに重要なAQP3を増加させる働きも持っています。AQP3は加齢や光老化で減ってしまうものの、セルフケアで増加させることはできません。新しいヒアルロン酸製材は、減ってしまったAQP3の増加に有効性を示すことがわかっています。(10)

ヒアルロン酸注射で首のしわ改善や内側から潤うぷるぷる肌を手に入れるなら「製材選び」が大切

宮田さん:ヒアルロン酸注射をする際の注意点などがあれば伺いたいです。

森川先生:ヒアルロン酸注射を受ける際に重要なことは、大きく二つあります。一つは製材選びです。肌の保水成分を増加させるヒアルロン酸製材は、架橋型と非架橋型に分けられます。架橋型のヒアルロン酸製材は持続期間が比較的長く、保水力に関しては9か月ほど持続します。(10) 1回の注射で効果が得やすく、比較的長期間持続するため、患者さん側の費用など負担は少なくなるでしょう。

ヒアルロン酸製材の非架橋型・架橋型のイメージ例

森川先生:顔以外に、年齢を重ねると気になってくる、首のしわ改善にも効果が期待できます。(10) 首まで含めて顔の印象になるので、首もしっかりケアできると嬉しいですよね。その点から架橋型ヒアルロン酸製材を、患者さんが要望されるケースは少なくありません。

宮田さん:非架橋型のヒアルロン酸製材はどれくらい効果が持続するのですか?

森川先生:非架橋型のヒアルロン酸製材の場合、テクスチャーがさらっとした液状で、架橋型よりも分解されるまでの時間が短くなります。したがって、持続期間も架橋型より短いですね。(9) 個人的な実感では、2~3か月程度かなと思います。また、非架橋型は初期に複数回注射をする必要があります。

宮田さん:架橋型も非架橋型も、肌の保水力の改善に一定の効果が期待できるものの、架橋型のほうがより効果が持続しやすいとは知りませんでした。

森川先生:とはいえ、効果の持続期間は個人の体質などが大きく影響します。また、架橋型のヒアルロン酸注射よりも医師の技術力の差が出にくいのも、患者さんにとっては非架橋型を選ぶメリットになると思います。(11)

ヒアルロン酸製材について解説する森川先生

森川先生:ヒアルロン酸注射を受ける際には、もう一つ重要なことがあります。それは、解剖学の知識や注入治療の技術がある医師を見つけることです。

宮田さん:注入治療が上手な医師を見つけられるポイントがあれば知りたいです。

森川先生:まずはクリニックのホームページなどで、医師の得意な治療が「注入治療」かをチェックしましょう。ヒアルロン酸の製材メーカーの講習などをこまめに受け、技術をアップデートしているかもポイントになると思います。個人的に大事だと思うのは、医師本人が顔出しをしていることです。顔を出して、責任を持って施術している医師に任せることをおすすめします。

宮田さん:たしかに先生のようにしっかりと患者さんと向き合ってくださる方であれば、安心してお任せできますね。

森川先生:近隣に複数のクリニックがある方は、まずカウンセリングの予約をしてみるとよいでしょう。実際に行って、クリニックの様子を見たり、医師と話したりすることも大切ですよ。宮田さんと、そして、この記事を読んでくださった皆さんが、気になることを相談できる、信頼のおける医師と出会えることを願っています。

顔や首の保湿の重要性について理解を深める

参考文献
(1) 安田 利顕,漆畑 修:改定10版 美容のヒフ科学:南山堂.2021
(2) Humphrey S et al. Dermatol Surg. 2021;47(7):974–981
(3) Michalak, M. et al. Nutrients 2021; 13(1):203
(4) 櫻井 直樹:正しい知識がわかる 美肌辞典:高橋書店,2021
(5) 鈴木 雅一,田中 滋康:生化学.2014.86(1):41-53
(6) 石橋 賢一:コスメトロジー研究報告.2010.18:78-80
(7) Draelos Z. J Clin Aesthet Dermatol. 2012;5(7):53–56.
(8) Ji Li, Hongfu Xie et al:The Australasian College of Dermatologists.2010.51(2):106-112
(9) 古山 登隆:解剖から学ぶヒアルロン酸注入療法:メディカルレビュー社.2020
(10) KM Kapoor,et al.:Clin Cosmet Investig Dermatol.2021;14:1105-1118
(11) 原 かや:美容皮膚医学 BEAUTY.2023.6(2):51-55

 

アンケートの調査概要
調査目的:顔や首の保湿に関する対策や満足度に関する調査
調査対象:全国の顔や首の保湿対策を行っている20代以上の女性 有効回答数402名
調査方法:インターネットリサーチ
調査期間:2024年8月22日
利益相反:アラガン・エステティックスにて調査企画し、マイナビウーマンに調査を依頼
マイナビウーマンが調査票を作成し、オンラインパネル登録者に調査、回収

監修・取材協力

湘南美容皮フ科 渋谷公園通り院 院長 森川 総一郎 先生

湘南美容皮フ科 渋谷公園通り院 院長 森川 総一郎 先生

京都大学医学部医学科卒業(2019年)。兵庫県立尼崎総合医療センター(麻酔科、集中治療科など)、虎の門病院麻酔科を経て、2021年湘南美容クリニック美容皮膚科に入職。2024年7月より湘南美容皮フ科 渋谷公園通り院 院長 兼 若返り処置エキスパートドクターに就任。若返り処置エキスパートドクターとして加齢を中心とした肌悩みに対し、一人一人ベストな治療を提案している。

湘南美容皮フ科 渋谷公園通り院

住所:東京都渋谷区神南1-16-3 ブル・ヴァールビル4F

インフルエンサー、SNSコンサルタント・セミナー講師 宮田 綾子 さん

インフルエンサー、SNSコンサルタント・セミナー講師 宮田 綾子 さん

50代、40代に向けた美容、メイク、トレーニングの情報を発信するインフルエンサー。契約社員からインスタグラマーに転身し、インスタグラムのフォロワーは28万人以上(2024年8月時点)で、SNSのコンサルティングやセミナー講師も務める。20代と10代後半、二人の子を持ち、保護猫と暮らしている。

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