古山先生は、加工した顔とリアルな自分の美意識との差を埋めるのに、美容医療の専門家が一役買えることもあると話します。
「実は『美しい顔』にすることだけを考えて施術をすると、施術後の顔はほぼ同じになってしまいます。本来その人が持っていた個性がなくなり、美しくても、いわゆる『量産型』のような顔になってしまいがちです。加工アプリで補正した顔が似た感じになるのも、同じような理由でしょう。しかし、正しい知識と豊富な経験を持つ医師ならば、それぞれの患者さんが持つ魅力を客観的かつ的確に伝えつつ、さらに魅力を引き出せることがあります。加工アプリによって生まれる美とは違う、個々の人が持つ現実的な美のすばらしさを伝えられるはずです」
画像の加工技術が進化するにつれて、医師の役割は、これまで以上に必要とされるようになっていくと、古山先生は続けます。
「加工アプリで補正された同じような顔が世の中にあふれてくると今度は、今まであまり美しくないと考えられていたパーツや、自分が欠点だと思っていた部分が『個性』に変わり、うらやましがられる時代がくることも考えられます。
美のトレンドは、日々変わっていくものです。今はイヤだと思っている自分の顔や体が、いつの間にかポジティブに捉えられる可能性もあることを、ぜひ覚えておいていただきたいです」
加工アプリは、人々の美意識に少なからず影響を与えるようです。ただし、それに惑わされてばかりではないことが、今回の調査と先生への取材によって見えてきたかもしれません。
参考文献
「THE FUTURE OF AESTHETICS」February 2022 - Allergan Aesthetics an AbbVie company