食事制限や運動を取り入れたダイエットや、エステサロンでの施術では、「二の腕を細くしたい」「お腹だけ痩せたい」といった部分痩せは、なかなかうまく実現できません。

ぜい肉が気になって、お気に入りの服が着られない。そんな経験はありませんか？

「服のサイズは20代の頃と変わらないのに、うまく着こなせていない気がする……」という場合は、体型の変化も影響しているかもしれません。

「二の腕やお腹を細くしたい…でも部分痩せは不可能？」と考えている方に向けて、クリニックで行なう「部分痩せ治療」という選択肢をご提案します。

監修・取材協力：下島 久美子 先生（KUMIKO CLINIC 院長）

一般的なダイエットでも、体重を減らしたり体全体を引き締めたりすることは可能です。では、なぜピンポイントで脂肪を落とすのは難しいのでしょうか。まずは、その理由を解説します。

糖質制限、ランニング、ホットヨガなど、自分でがんばるダイエットを正しく行なえば、体全体を引き締めて体重をコントロールすることも不可能ではありません。これは、ダイエットにより全身の脂肪細胞の大きさが小さくなるためです。⁽¹⁾

しかし、努力をやめると脂肪細胞の大きさはもとに戻ってしまいます。これがいわゆる「リバウンド」です。⁽¹⁾

また、一般的なダイエット方法では、二の腕やお腹、背中など、気になる部分のぜい肉だけをピンポイントで減らす「部分痩せ」はできません。

これは、脂肪がつきやすい場所が人により異なることが影響しています。 

例えば、女性では「皮下脂肪型肥満」が多く、太ももやお尻など下半身の肉づきが良くなる傾向が見られます。⁽²⁾皮下脂肪は下半身だけではなく上半身にもつきますが、いったんついてしまうとダイエットしても減りにくいという特徴があります。 ⁽³⁾

一方、男性では、お腹の内臓のまわりに脂肪が過剰に蓄積する「内臓脂肪型肥満」が多く見られます。⁽¹⁾

食事制限や運動によるダイエットをすると、まず内臓脂肪が減っていきます。⁽⁴⁾しかし、内臓脂肪を落としただけでは、部分痩せ効果を実感するのは難しいかもしれません。 

部分痩せを実現し、理想のスタイルを目指すには、皮下脂肪を落とすことがポイントになります。 

クリニックで受けられる部分痩せ治療「医療痩身（そうしん）治療」は、医師が医学的根拠に基づいて行う治療です。⁽⁴⁾エステサロンが行なう「痩身エステ」や、自分で取り組む「ダイエット」とはまったく異なります。 

痩身エステの目的は、リラクゼーションや、痩せるためのサポートがメインです。痩身効果が得られるとは限らず、部分痩せも難しいでしょう。

一方、クリニックにおける部分痩せ治療は、医学的に痩身効果が証明されている治療です。その効果がほかのダイエット方法とどのように違うのか、詳しく説明します。 

クリニックで行なう部分痩せ治療は、脂肪細胞の大きさではなく数を変化させます。⁽⁵⁾

一般的なダイエットや痩身エステで脂肪細胞の大きさが小さくなっても、数自体が減らなければ、ダイエット前の状態に戻るリスクは避けられません。

「一時的に体重減少に成功したけれど、気が緩んだ途端に元の体型に戻ってしまった……」という経験がある方も少なくないはずです。

その点、部分痩せ治療では脂肪細胞の数自体を減らすため、痩身効果が期待できます。

部分痩せ治療では、その名のとおり狙った部分の脂肪だけを減らすことができます。⁽⁵⁾

つまり、減らしたくない胸などの部分はそのままに、気になるお腹まわりや太もも、二の腕の悩みにダイレクトにアプローチが可能です。

部分痩せ治療を受けて脂肪細胞の数を減らしたあとは、基本的に脂肪細胞の数が増えることはありません。⁽⁶⁾

治療後の状態を維持できるため、リバウンド^※も抑えられます。⁽⁶⁾

脂肪細胞の数を減らしてつくったウエストのくびれ、すっきりとした背中やお尻、ほっそりとした二の腕、太ももなどは、リバウンド^※しにくく美しいプロポーションを保ちやすくなります。

部分痩せ治療は、痩身効果と同時にリバウンド^※抑制効果が期待できる治療法といえるでしょう。

※リバウンドとは、一度減少した脂肪細胞の数が戻ること

部分痩せ治療にはさまざまな種類がありますが、必ずしもメスや針を使うものばかりではありません。医師のみが使用できる機器で行なう痩身治療は、効果や安全性がしっかりしたものが多いのが特徴です。

メスや注射針を使う部分痩せ治療の方法は、大きく分けて以下の2つです。

• 脂肪吸引

脂肪吸引では、メスで皮膚を数mm切開し、専用の細い管を皮膚の下に入れて、脂肪細胞を吸引します。この方法では、大きな部位を一度に治療することが可能です。⁽⁵⁾

• 脂肪溶解注射

脂肪溶解注射では、少量の薬剤を皮下に注射して気になる部分の脂肪を溶かします。顔などの小さなパーツの部分痩せに向いていますが、効果には個人差があり、部位によっては複数回の治療が必要となります。⁽⁵⁾

メスや注射針を使わない部分痩せ治療の方法は、大きく分けて以下の2つです。 

• 脂肪冷却治療

脂肪冷却治療は、「脂肪は低温に弱い」という特性を利用した治療方法です。専用の機器で脂肪細胞のみを結晶化することで体外に排出させ、その部分の脂肪細胞の数を減らします。 ⁽⁵⁾

• 加熱治療

加熱治療は、専用の機器で皮下脂肪を温めることで、皮下脂肪を分解し徐々に減らす治療方法です。代表的なものとして、高周波（ラジオ派）治療があります。 ⁽⁵⁾

なお、機器を用いた治療の場合には、薬事承認を受けている機器かどうか確認するようにしましょう。薬事承認は、国による厳しい審査を受け、品質および日本人における有効性と安全性が認められて初めて受けられるもので、治療を受ける際の重要な判断基準になります。

クリニックのホームページなどに記載されている場合もあるので、ぜひチェックしてみてください。 

自分でがんばるダイエットや、エステサロンなどで行なわれる痩身エステでは、全身を引き締めることはできても、部分痩せはできません。ピンポイントで狙った部分の脂肪を減らしたい場合は、クリニックで受けられる「部分痩せ治療」を検討してみましょう。 

部分痩せ治療は、医師によって行なわれる治療の一つです。医学的根拠に基づき脂肪細胞の数にアプローチするため、ほかの方法では難しい部分痩せにも効果が期待できます。リバウンドしにくいのも特徴です。 

部分痩せ治療はどの医療機関でも受けられるものではありません。また、クリニックごとに対応している治療や採用している機器も異なります。部分痩せ治療を希望する場合は事前にしっかりとカウンセリングを受け、納得のいく治療を受けるようにしましょう。

参考文献
(1)杉浦 甫:美容皮膚医学BEAUTY.2019.2(11):6-23
(2)中野 俊二:Bella Pelle.2018.3(4):14-19
(3)厚生労働省:e-ヘルスネット:"メタボリックシンドロームを予防する食事・食生活"
(4)川島 眞 他:Bella Pelle.2018.3(4):6-13
(5)宮田 成章:美容皮膚医学BEAUTY.2019.2(11):24-32
(6) T-R Kwon et al:Skin Res Technol.2015 May;21(2):192-200