「日焼け止めの塗り方が知りたい」「塗る順番や量はどれくらい?」など、日焼け止めの正しい塗り方や塗り直しの方法が分からず、なんとなく使っているという方も多いかもしれません。

日焼け止めの塗り方が誤っていると、うっかり日焼けをしてしまったり、その後の肌の老化につながったりする可能性もあるため、正しい日焼け止めの塗り方を知っておくことが大切です。

本記事では、秋葉原スキンクリニックの堀内 祐紀 先生に、顔と体の日焼け止めの塗り方や、日焼け止めを塗る際に注意しておきたいポイントなどについて伺いました。

監修・取材協力:堀内 祐紀 先生(秋葉原スキンクリニック 院長)

目次

日焼け止めを常に塗るべき理由

日焼け止めが必要なのは夏、もしくは、長時間屋外に出る予定があって日焼けのリスクが高いときだけ、と考えている方も多いようです。

しかし、紫外線は1年を通じて降り注ぎ、肌にさまざまなダメージを与えています。そのため、一時的な使用では十分な効果が期待できません。(1)

それでは、季節を問わず日焼け止めを常に塗るべき理由を、さらに詳しく見ていきましょう。

紫外線による肌のダメージや老化を抑えられる

肌が紫外線を浴びると、細胞内で活性酸素が発生します。活性酸素は、体の酸化や老化の原因にもなるやっかいな物質です。

活性酸素は、コラーゲンやエラスチン線維そのものを変性させるばかりではなく、その生成に重要な役割を果たす線維芽細胞も破壊したり傷付けたりして、肌にダメージを与えます。その結果、肌のハリや弾力が低下し、しわたるみが生じやすくなります。(2)

日焼け止めを上手に使えば、このような紫外線による肌ダメージを抑えることが可能です。

シミの発生を予防できるから

日焼け止めは、シミの予防にも欠かせません。

紫外線を浴び、表皮にあるメラノサイトと呼ばれる細胞が元気になると、メラニン色素が増えてしまいます。メラニン色素は、紫外線から肌を守ってくれる重要な存在ですが、肌に沈着するとシミになります。(1)

日焼け止めは、メラノサイトが元気になり、メラニン色素が増えることを抑えてくれるため、シミの予防に役立つのです。

皮膚がんなど重大な病気のリスクを下げられる

紫外線は、皮膚がんなど重大な病気を引き起こす原因の一つといわれています。日焼け止めは、このような病気にかかるリスクの軽減にもつながります。(2),(3)

紫外線とは無関係にできるがんもありますが、日頃から日焼け止めを塗って用心しておくに越したことはないでしょう。

日焼け止めのSPFとPAを知る

日焼け止めのSPFはUVB、PAはUVAを防ぐ

次は、日焼け止めを選ぶ際に知っておかなければならない「SPF」と「PA」についてです。

SPFとPAを正しく理解すれば、使用する場面や肌の悩みに応じた日焼け止めを選べるでしょう。

SPFを正しく理解する

SPF(Sun Protection Factor)は、波長の短いUVB(紫外線B波)を防ぐ指数のことです。SPFは、日焼け止めを塗らない場合と比較してUVBによる炎症をどれぐらい長く防ぐことができるかを表す数値で、数値が大きいほど効果は長くなります(1)

ここで、UVBのことを少し説明しておきましょう。

UVBは、屋外での日焼けのおもな原因となる紫外線です。表皮に強いダメージを与え、肌が炎症を起こして赤くなる現象(サンバーン)や、メラニン色素の沈着で肌が黒くなる現象(サンタン)、シミやそばかすの原因となります。

したがって、屋外での日焼けを防ぎ、シミ・そばかすを防ぐためには、SPF値に着目して日焼け止めを選ぶことが大事です。(1)

PAを正しく理解する

PA(Protection Grade of UVA)は、UVA(紫外線A波)を防ぐ効果を表すものです。PAは数値ではなく4段階の「+」で表され、「+」の数が多いほどUVAを防ぐ効果が高くなります。

地上に届く紫外線のうち約9割は、UVAです。波長の長いUVAは、表皮を通り抜け真皮にあるコラーゲン、エラスチン線維芽細胞を傷付けるため、シワやたるみのおもな原因といってもよいでしょう。

しかも、UVAはガラスを通過して家や車の中にまで入ってくるため、屋内であっても気が抜けません。肌へのダメージや老化を防ぐためには、外出しないときでもPA値の高い日焼け止めをきちんと塗ることが必要です。(1)

パーツ別!日焼け止めの正しい塗り方

では、日焼け止めの正しい塗り方をパーツごとに説明します。塗り忘れしがちな部分も紹介するので、チェックして全身を紫外線から守りましょう。

日焼け止めの塗り方【顔】

顔の日焼け止めの正しい塗り方

顔に日焼け止めを塗るタイミングは、スキンケア後のメイク前です。

適量の日焼け止めをいったん手に取り、両ほほ・額・鼻・あごの5ヵ所に置きます。ほほ→額→鼻→口周り→フェイスライン→目の周りの順に、中指と薬指で優しくなじませましょう。(1)

日焼け止めの塗り方【首】

適量を手に取り、首とえり足の数ヵ所に置きます。優しく広げながら、ムラにならないようになじませましょう。

日焼け止めの塗り方【手足】

手足に塗る場合は、肌の上に直接日焼け止めを線状にたっぷり出します。手のひら全体を使い、大きく円を描くようになじませましょう。(1)

塗り忘れしやすい部位に注意!

日焼け止めを塗り忘れやすい部位

顔周りで塗り忘れしやすいのは、「髪の生え際」「眉間」「まぶた」「耳」「小鼻のわき」「フェイスライン」です。「首の後ろ」も忘れがちなので注意してください。

体で塗るのを忘れがちなのは、「手の甲」「足の甲」「ひざ」「ひざ裏」、そして「ボディの側面」「背中」「デコルテ」なども塗り忘れることが多いため、気を付けましょう。

日焼け止めを塗るときのNGポイント・注意点

日焼け止めの効果を正しく発揮するためにも、日焼け止めのNGポイントや注意点を把握しておきましょう。

肌質に合わない日焼け止めは使用しない

日焼け止めは、いくらUV効果や配合されている成分がよかったとしても、自分の肌質にあったものを選ぶことが大切です。

例えば、乾燥肌の人であれば日焼け止めに保湿成分が配合されたものを選ぶとよいでしょう。しかし、脂性肌の人が同様の日焼け止めを使うと、油分過多になりニキビなどの肌トラブルを招く可能性があります。

肌質は性別の差やホルモンバランスによっても異なるため、自分の肌と対話しながら日焼け止めを選択し、日によって使い分けることをおすすめします。

量を減らす・薄く伸ばす

日焼け止めの効果を適切に発揮させるためには、日焼け止めの量を減らしたり薄く伸ばしたりするのはNGです。

例えば、製品に表示されたSPFの効果を得るには、1㎝×1㎝の肌に2mgの量が必要ですが、実際の塗布量の平均は0.5mg/㎠といわれ、(4)UV効果を正しく得られているとはいえないでしょう。

日焼け止めを肌に薄く伸ばせば伸ばすほど、日焼け止めの効果は薄くなってしまうため、もったいないからと日焼け止めの量を減らさず、製品に書かれた塗布目安量を守ることが大切です。

手のひらですり合わせて塗る

日焼け止めを手のひらでゴシゴシとすり合わせてから塗るのは、おすすめできません。

手のひらですり合わせてから肌へ塗布すると、均一な量が塗れずムラになりやすくなります。

場所によっては十分な日焼け止めの量が使えておらず、思わぬ日焼けをすることがあるため、日焼け止めは手のひらで広げず、肌に直接載せてから広げるようにしましょう。

昨年使い残した日焼け止めは使用しない

日焼け止めの効果を正しく発揮するためにも、昨年使い残した日焼け止めを使うのはやめるべきです。

日焼け止めは一度空気に触れると容器の中で劣化しやすくなるため、時間の経過とともに品質が低下している可能性があります。開封後の化粧品はできるだけ早めに使いきり、(5)去年の日焼け止めはもったいなくとも処分しましょう。

なお、使用期限の記載がなく未開封の日焼け止めであれば、使用期限は製造より3年(6),(7)程度とされています。

日焼け止めを塗ってすぐに肌を触らない

日焼け止めは、肌になじんでからの方が落ちにくくなるため、日焼け止めを塗り終わってすぐに、肌を触らないようにしましょう。

砂場に水をかけたときは一瞬水をはじくものの、その後だんだん水がしみこんでいくように、日焼け止めも塗ってから時間が経過した方が、肌に密着しやすくなります。

巷では、日焼け止めが効果を発揮するのは15分~30分経った後といわれることがありますが、日焼け止めは塗った直後から効果が発揮されるので、時間は関係ないでしょう。

日焼け止めの選び方・使い分け方

日焼け止めは、SPFとPAが高い製品の方が、日焼け防止効果は高いものの、肌への負担が大きくなってしまいます。

そのため、日焼け止め選びに迷われている方も多いかもしれません。日焼け止めの選び方・使い分け方について見ていきましょう。

生活スタイル別

日焼け止めを選ぶ際は、自分の生活スタイルに合わせるのがポイントです。

例えば、小さなお子様がいて保育園の送り迎えに行ったり、頻繁に公園に行ったりと外に出る機会が多い人は、紫外線を受ける機会が多いため、SPF・PAの高い日焼け止めを選ぶとよいでしょう。

一方、外に出る機会がほとんどないデスクワークが中心の方であれば、日焼けをする機会は朝の出社時が中心なので、PAは高いものにしつつSPFは低い日焼け止めを利用するのもいいかもしれません。

肌の状態別

自分の肌の状態によって、日焼け止めを選ぶことも大切です。

例えば、UV効果の高い日焼け止めは肌が乾燥しやすくなることがあるので、肌が弱い方はSPFが低いものを使ってみましょう。

普段は肌に優しいものを使って、アウトドアなどで長時間外に出るときだけSPFの高い日焼け止めを使うなど、肌と相談しながら日焼け止めを選択するのが重要といえます。

日焼け止めの塗り方Q&A

日焼け止めのことをさらによく知っていただくために、ここからはQ&A方式で日焼け止めの正しい使い方を紹介します。

Q.SPFとPAどっちを重視したらいい?

日焼け止めに配合されている成分の代表として、SPFとPAがありますが、より重視したいのはPAでしょう。

肌の老化反応に関与するUVAをブロックするのはPAなので、PAは「PA++++(フォープラス)」を選択したいところです。

Q.落ちにくい日焼け止めはある?

肌に塗った後に落ちにくい日焼け止めを探しているという方は、「ウォーターレジスタンス(ウォータープルーフ)」成分の配合されているものをチェックしてみましょう。

ただ、ウォーターレジスタンスの日焼け止めは使用する人によっては肌への負担を感じる場合もあるため、自分の肌に合わないと感じる場合は使用を止めることも大切な判断です。

Q.値段の安い日焼け止めと高い日焼け止めの違いはある?

日焼け止めの値段の違いは、大きく分けて原料の違いと、生産数の違いが挙げられます。

日焼けを予防する成分以外にも美容成分などが入っていると、原材料費が高くなり値段も高くなりがちです。

また、大手化粧品メーカーであれば一度に大量の製品を販売できるため、1個当たりの単価を下げることができますが、生産数が少ない場合は1個当たりの単価も高くなるため値段に影響が生まれやすいといえるでしょう。

SPFやPAの検査はどの会社も同じ基準で試験を受けているため、基本的には日焼け予防効果自体に差はないと考えられます。

Q.日焼け止めを使う前のスキンケアのポイントは?

日焼け止めを塗る前のスキンケアを行うときには、肌の水分補給に力を入れるとよいでしょう。

日焼け止めに配合されている「散乱剤」は、紫外線を乱反射させ肌への紫外線の影響を防ぐ効果があります(8)が、肌が乾燥しやすいという特徴もあります。

そのため、化粧水を重ね付けし、肌の保湿を心がけましょう。なお、日焼け止めの中には保湿成分が含まれているものもあるので、脂性肌の方は、油分過多にならないよう気をつけましょう。

Q.日焼け止めに含まれる成分はどれも同じ?

日焼け止めに含まれる成分は、それぞれの製品によって異なります。紫外線からお肌を守る成分には、高エネルギーの紫外線を吸収する、いわゆる「紫外線吸収剤」と、光を遮断・反射、あるいは散乱させる「紫外線散乱剤」の2種類があります。製品によって、どちらか一方の成分を含んでいるもの、両方の成分を含んでいるものなど、さまざまです。

Q.紫外線吸収剤は肌に悪いと聞いたけれど、本当?

紫外線吸収剤だからといって、一概に悪い成分だということはできません。紫外線吸収剤に限らず、使用される方の体質によって、特定の成分に刺激を感じたりアレルギー反応を起こす場合があります。

Q.敏感肌の人や日焼け止めで肌荒れを起こしやすい人の、日焼け止めの選び方は?

敏感肌の人も、毎日欠かさず紫外線から肌を守ることがとても重要です。デリケートな肌を守るために、無香料、パッチテスト済み、アレルギーテスト済み、低刺激処方などの記載がある製品を選ぶことをおすすめします。

敏感肌の場合は、日焼け止めに含まれる香料や防腐剤、さらには日焼け止めの化学成分そのものに、刺激を感じたり、アレルギーを起こしたりする可能性があります。そのため、これまでに日焼け止めで副作用の経験がある人は、使用前に日焼け止めを腕の内側など、万が一反応が出ても目立たない部位の狭い範囲に塗り、数日間様子を見てください。皮膚に合わない場合は、無理に継続せず使用を中止してください。

また、必ずしもSPFの高い日焼け止めを使用する必要はありません。敏感肌の人や日焼け止めで肌荒れを起こしやすい人は、SPFの低いものを使用し、頻繁に塗り直すのも一つの方法です 。

Q.日焼け止めを塗り直す必要はある?

多くの人が、日焼け止めは一日効果が続くと考えているかもしれません。

しかし、紫外線吸収剤が含まれている日焼け止めは、紫外線を浴びると成分が分解されるため、時間の経過とともに効果が落ちてしまいます。また、どの日焼け止めも汗をかいたり、衣類の摩擦や、泳いだりすると効果がなくなる可能性があります。日焼け止めのタイプに関わらず、屋外にいるときは2時間ごとに塗り直すようにしましょう。特にSPFが低いものは効果が短いので、より頻繁に塗り直すことが大切です。

また、日焼け止めを塗る順番も大切です。日焼け止めは皮膚を保護するためのものなので、スキンケアの後、ファンデーションを塗る前に日焼け止めを塗ることをおすすめします。

Q.日焼け止めは少量でも効果がある?

日焼け止めの効果を得るためには、たっぷりとまんべんなく塗ることが大事です。パッケージでうたわれているSPFの効果を引き出すために、適切な量をきちんと理解しておきましょう。

顔と首に関しては、それぞれ500円玉1枚分程度を手に取り塗ることで、所定のSPF効果が期待できます。体のほかの箇所では、腕、太もも、ひざ下、体の前面、背面にそれぞれ500円玉2枚分程度の量が適量です。

Q.「飲む日焼け止め」を飲んでいれば、日焼け止めは塗らなくてもよい?

「飲む日焼け止め」は、日焼け後の活性酸素の除去に役立つ抗酸化成分や、肌によいとされるビタミンなどが配合されたサプリメントです。

しかし、「飲む日焼け止め」を飲んでも、物理的に紫外線をブロックすることはできません。塗る日焼け止めや、衣類や帽子・サングラスなどを併用しなければ、紫外線による肌ダメージを防ぐことは困難です。

「飲む日焼け止め」は、日焼けケアの補助的な位置付けと考え、過信しないようにしましょう。

Q.日焼け止めを塗っていれば、ほかの日焼け対策は必要ない?

紫外線対策を、日焼け止めだけに頼るべきではありません。日焼けを防ぐ服やつばの広い帽子、サングラスなどを身に着け、できるだけ日陰を歩くなどして、全身を紫外線から守りましょう。

まとめ

日焼け止めをきちんと塗って紫外線対策を行うことは、肌の老化を防ぐことにつながります。また、皮膚がんになるリスクを減らすことも可能です。

なかには、「日焼け止めが肌へ悪影響を与えるのでは?」と心配する人もいます。しかし現時点では、日焼け止めによって著しく有害な問題が生じることを示す、有力な科学的証拠はありません。

今だけではなく、将来も美しい肌を維持するために、ご自身にあった日焼け止めを毎日欠かさず塗るようにしましょう。

 

参考文献
(1) 櫻井 直樹,永松 麻美:正しい知識がわかる 美肌事典. 高橋書店. 2021.
(2) Bella Pelle Vol.5 No.1. メディカルレビュー社. 2020.
(3) 美容皮膚医学 BEAUTY Vol.3 No.12. 医学出版. 2020.
(4) Prescilia Isedeh,Uli Osterwalder,Henry W. Lim:Photodermatol Photoimmunol Photomed. 2013;29(1):55-56. 
(5) 日本化粧品工業会JCIA「化粧品を保管するときに注意していただきたいこと」
(6) 東京都健康安全研究センター「化粧品の表示」
(7) 日本化粧品工業会JCIA「化粧品Q&A」
(8) 日本化粧品工業会JCIA「化粧品用語解説」

監修・取材協力

秋葉原スキンクリニック 院長 堀内 祐紀 先生

秋葉原スキンクリニック 院長 堀内 祐紀 先生

東京女子医科大学医学部卒業。東京女子医科大学皮膚科学教室入局後、都内皮膚科・美容クリニック勤務を経て、2007年秋葉原スキンクリニック開設。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本脱毛医学会理事。日本皮膚科学会・日本美容皮膚科学会・日本レーザー医学会・日本抗加齢医学会・日本香粧品学会 所属。Allergan Medical Institute Japan Faculty。一般社団法美容皮膚エキスパート協会代表理事、Aesthetic Medical Academy理事。保険治療だけでなく美容治療を各種取り揃え、さらに肌を良くしたい!という気持ちを叶えるために、エビデンスのしっかりとした治療を、自信を持って届ける。

秋葉原スキンクリニック

住所:〒101-0021 東京都千代田区外神田4丁目6−7 カンダエイトビル 2階/3階

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